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「老後資金2,000万円問題が報道されてから、私のもとにも、老後を心配するたくさんの相談が寄せられています。私に言わせれば怖がりすぎですね」

 

こう語るのは、『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)の著者で、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。

 

今年6月、「人生百年時代を年金だけで乗り切るのは不可能、老後資金として2,000万円が必要」と、金融庁の報告書が公表された。さらに8月には厚労省が年金の財政検証結果を発表。少子高齢化が進むなか、現役世代の年金の受給額が厳しくなっていくことが示されたが、本当に大丈夫なのだろうか。

 

「50歳を過ぎてから、いまさら2,000万円余計に貯めろとか言われても難しいでしょ。金融庁は株や投資での運用を勧めていますが、初心者が簡単にもうけられるものではない。なけなしの資金を減らしてしまうリスクのほうが心配」

 

そんなリスキーな運用をせず、貯金がなくても大丈夫な老後設計はできないものか。長尾さんが現在の年金制度を徹底的に分析。

 

「“一生安心”生活を過ごすためには5つのステップが必要。順番に解説していきましょう」

 

【1】住宅ローンは60歳までに完済しておく!

 

「お金の心配をせずに安心して老後を暮らすためにはローン返済は大きな足かせになります。退職金をすべて使ってでもローンを完済し、老後を迎えることが肝心」

 

【2】子どもは自立させる!

 

「自立せず親の脛をかじり続ける子どもも老後の足かせ。かわいいあまりに甘やかして自立させずにいると、年金生活になったとたんに共倒れになります。経済的に子どもをきちんと自立させることは最低限の親の務め。親に先立たれたときの子どものためでもあります」

 

【3】60歳になったら、月の支出を30万円にする!

 

「近年、政府の方針で、定年を延長するなど、60〜65歳間の雇用を受け入れる企業が増えています。ただ雇用延長や再雇用の際、ほとんどの人が収入は半減します。これを冷静に受け入れ、生活水準を見直さないといけません。具体的には、月30万円。年間360万円でやりくりするのが理想。最初は厳しいかもしれませんが、ぜいたくしなければ十分に暮らしていける水準。夫婦で家計簿を見ながら、支出の見直しをしてください」

 

【4】年金受給は70歳まで繰り下げる!

 

「年金は65歳になったら受け取るものと考えている人がほとんど。これを70歳から受給するようにすれば、年金の受給額が42%増額されるんです。これを利用することが、安心した老後を過ごすために重要なポイント。たしかに人は何歳まで生きるかわかりません。だから少しでも早く受け取りたいのは人情でしょう。でも夫の年金180万円、妻の年金100万円で70歳まで繰り下げ受給した場合と、65歳から受給した場合の81歳までの年金総額は、ほぼ同じ額になり、それ以降は、長生きするだけ、70歳からのほうが得になる計算です」

 

平均寿命が男女とも80歳を超えているいま、じつは70歳からの受給のほうが明らかに得。しかも、もし仮に病気などになり、70歳より早く年金を受け取りたくなったら、申請すれば、すぐに受給を開始できるのも心強い。

 

【5】夫は70歳、妻は65歳まで働く!

 

「いまの60代は若い。職場を選ばなければ、70歳まで十分働けます。65歳からの5年間の厚生年金が加算されれば、頑張って働いた分、年金額も増える。一石二鳥です」

 

こうして夫70歳、妻65歳まで働くことで、夫の年金180万円、妻の年金100万円を70歳まで繰り下げ受給した場合、受給額が42%アップ。なんと70歳から支給される年金は合わせて年間404万円に!

 

「65歳から受給してしまうと年間280万しかもらえず、支出を月30万円(×12カ月=年360万円)に抑えても年間80万円もの赤字。それが70歳から受給にすると、(年金収入404万円−年支出360万円=)毎年44万円の黒字。劇的に老後が楽になるんです」

 

この試算で一番大切なことは、夫婦そろって長生きすること。お互いにいたわり合う夫婦仲こそが、“貯金ゼロでも老後が安心”の最大の秘訣といえそうだ。

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