「朝、目が覚めて起き上がろうとしたら、目がグルグル回る」など“めまい”に悩む女性たちが増えている。’16年の国民生活基礎調査によると、女性の約3割がめまいを訴えていて、特に40代以降で急増するのだという。
「めまいの約7割は、耳の中の平衡感覚をつかさどる三半規管や耳石器が関係しています。女性は閉経後、女性ホルモンが減少することでめまいを起こしやすくなるのです。症状や原因はさまざまなので、原因を早く突き止めて、適切な治療をすることが大切です」
そう話すのは、聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科の肥塚泉教授。ひと口にめまいと言っても、3つのタイプに分けられるという。
「自分自身や周囲の風景がグルグル回るように感じるのは『回転性めまい』です。症状が激しいので、立つ、歩くといった動作に支障をきたすことが多く、不安を抱く人も多いのですが、このタイプは命に関わる心配はありません」(肥塚教授・以下同)
また、体がフワフワと宙に浮くような症状が出るのは「浮動性めまい」。これは耳の病気のほか、過労や睡眠不足、ストレス、脳の病気によって起こる。急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になったり、気が遠くなったりする「立ちくらみ」は、血圧の調整をつかさどる自律神経が乱れて、脳への血流が不足することで起こる。
「めまいが起こらないようにするため、また症状を改善するには、日常生活を見直すことが大切です。適度に体を動かして、睡眠の質を高める。食生活の改善、そして、あまり神経質にならないでストレスをためないことです」
次の10項目が、肥塚先生に挙げてもらっためまいを防ぐカギだ。
□日中は活動的に過ごす
□底の薄い靴を選ぶ
□栄養バランスのよい食事を取る
□アルコールは適量
□安眠できるよう心がける
□ぬるま湯で半身浴をする
□ストレスを遠ざける
□つえや手すりを活用する(ふらつきがある場合)
□自分を大切にする
□めまいは笑って治す
なるべく安静にしようと部屋にこもってしまいがちだが、それだとかえって症状が治りにくくなるという。
「体を動かさずにいると、内耳の働きを補う機能が働かないため、めまいは改善されません。散歩やウオーキングなどをして、日中は活動的に過ごしましょう。その際、靴は靴底の薄いものを選ぶこと。足裏は地面からの圧力や重力を感じ取り、脳に伝え、体の各所にバランスを取るための指令を出します。ふらつきや転倒が心配な人はつえや手すりを活用してもOK。手のひらから脳に情報が伝わりバランスを取ることで、ふらつきや転倒を防ぐことができます」
そして、栄養バランスのよい食事を取るように食生活を改めよう。
「平衡感覚を乱すアルコールはめまいを悪化させ、たばこに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるので、たばこやアルコールは控えましょう。また、寝不足や過労はストレスのもとになり、めまいの症状が改善されにくくなります。安眠がとれるようなライフサイクルを心がけましょう」
睡眠の質を上げるためにぬるま湯での半身浴もおすすめ。37〜40度ぐらいのお湯に、みぞおちから下をつけると、体の芯から温めてリラックス効果をもたらすことができるそうだ。
また、ストレスをためないように心がけるほかに、深呼吸をするなど、心身をリラックスさせよう。
「人間関係からのストレスを抱えないためにも、人に合わせようとしすぎたり、気を使いすぎないで、自分を大切にすることもとても大切です。体調がよくないと、どうしてもふさぎこみがちになりますが、落語を聴いたり、面白い小説などを読んだりして気分転換をはかることも効果的です。私は患者さんにダジャレを言って笑わせることもありますよ。前向きな気持ちで症状を改善していきましょう」