動脈硬化、心筋梗塞など、私たちが恐れる重大な疾患を引き起こす「内臓脂肪」。それを落とすには「食べ方が9割」。苦労せず続けられる画期的なメソッドがあった!
「内臓脂肪が体に有害であることは、医療者の間では長年知られていることです。そもそも、内臓脂肪を改善してもらうために、2008年から『メタボ健診(特定健康診査)』を導入したのに、人々の間で危機感がなく、なかなか本気で痩せようとしていません。これが、内臓脂肪の注意喚起を訴えようと思ったきっかけです」
池谷医院院長の池谷敏郎先生はこう話す。今年4月に出版した『内臓脂肪を落とす最強のメソッド』(東洋経済新報社)は注目を浴び、ベストセラー本となったが、いまだにその人気は衰えていない。
「内臓脂肪は、腸の周りにつく脂肪ですが、特に怖いのは、肝臓や心臓の周りにつく脂肪です。メタボによる脂肪肝は肝硬変や肝臓がんのリスクとなりやすく、心臓周囲の脂肪は、毛細血管を伸ばして炎症の原因となる物質を送り込み、動脈硬化を急速に進め、心不全や心筋梗塞を引き起こすのです」(池谷先生・以下同)
通常の動脈硬化は、血中コレステロール値や血糖値、血圧が高いなど、血管の内側の異常が原因となって進行する。
ところが、内臓脂肪による動脈硬化は、血管の外壁側から心臓表面を走る冠動脈に悪影響を及ぼして、動脈硬化を急速に進めるのだ。さらに、心臓の機能をも低下させ、心不全の要因ともなるというから恐ろしい。
ちなみに、脂肪肝を診断される人はほぼ、心臓周りにも内臓脂肪がついている可能性が高いという。
内臓脂肪は、動脈硬化の原因となる糖尿病や脂質異常症、高血圧などに悪影響を及ぼす。
ではどうすれば内臓脂肪を減らせるのだろうか。そこで、自身もダイエットに成功した経験を持ち、独自のダイエット理論を持つ工藤内科の工藤孝文先生、あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長の青木厚先生に、無理なくできる「内臓脂肪の落とし方」を聞いた。
「内臓脂肪を減らすには『ミートファースト』を提案します」というのは工藤孝文先生。
「ミートファーストは、肉を食べることによって分泌されるインクレチンというホルモンが、血糖値を穏やかに上昇させます。肉は胃の中での停滞期間が長いので、腹持ちがいいし、赤身肉には脂肪を燃焼する働きのあるL-カルニチンが多く含まれています。こうしたさまざまな観点から、内臓脂肪を減らすのにミートファーストは最適なのです」
この方法の唯一のルールは食べる順番を守るだけ。肉→野菜→炭水化物の順番で、肉を最初に食べることと、炭水化物を最後に食べるということさえ守れば、食べる量を変える必要はない。しかし、「ミートファースト」にすることで、自然と食べる量が減るという。
さらに、ベジファーストよりミートファーストのほうが、ダイエット効果が高いという結果もある。
「ミートファーストにすることで、高タンパク、低糖質で栄養が吸収されるようになり、その結果、脂肪が減少し、筋肉がしっかりつくようになったのです」
ほかにも、タンパク質には血管年齢を若く保つ働きがあり、脳梗塞や心筋梗塞の予防につながり、肌のハリを出してくれる若返り効果も期待できる。
1日に摂取したいタンパク質の量は女性で1日50g。実際に50gが吸収されるためには、赤身肉を100〜150g程度食べること。目安としては1食の量が片手のたなごころくらいだ。
食べる量を変えなくてもいいし、食べるものも気にしなくていい、食べない時間をつくる「12時間断食」を提案するのは青木厚先生。
「1日3食が当たり前のように提唱されていますが、それでは食べすぎです。摂取カロリーが消費カロリーを上回っているから、肥満になるのですから」
食べすぎは血糖値の乱高下を起こすだけでなく、内臓脂肪の蓄積にもなる。食べない時間をつくることで、内臓を休ませることができるうえ、脂肪燃焼もできるのだ。
「空腹の時間は、肝臓や筋肉に蓄積されたグリコーゲンを分解することで体脂肪を燃焼させてエネルギーを作ります。だいたい食後12時間くらいで肝臓や筋肉に蓄えられていたグリコーゲンは枯渇して、その後、内臓脂肪をブドウ糖に変換します。この仕組みは『糖新生』と呼ばれる代謝状態で、私たちの体が“飢餓状態”に耐えられるように作動するものです。糖新生の時は、細胞の掃除も行われます。理想は16時間の断食ですが、まずは12時間から始めるとよいでしょう」(青木先生・以下同)
糖新生が始まると、内臓脂肪が燃焼するだけでなく、細胞が活発に生まれ変わる、血糖値が下がる、免疫力が上がる、記憶力・認知力がアップするなど、私たちの体を若返らせてくれるさまざまなうれしい効果も期待できる。
「12時間断食」の基本は、1日のうち連続した12時間を「食べない時間」として守ることだ。1日8時間の睡眠をとっているとすれば、睡眠の前後数時間を「食べない時間」に設定すればいい。一方、「食べてOK」の12時間は何をどれだけ食べてもかまわない。
「こう考えると『食べてOK』の時間にドカ食いをすると思われるかもしれませんが、意外とそんなに食べられないものです。結果として、1日に食べる量が減ることになります。際限なくいつでも食べられる状態から『食べない時間』をつくることで内臓を休める時間を持つと、体のリセットにも」
「空腹の時間」は、水、お茶、コーヒー(ブラック無糖)以外は口にしないこと。どうしてもおなかがすいたらナッツ類、無糖ヨーグルトなら食べてもいい。最初のうちは慣れるまでおなかがすくかもしれないが、数日で体が慣れてくるという。
「ただし、糖尿病で投薬治療を受けている人は、低血糖のリスクがありますので、専門医の指示に従って行ってください」
内臓脂肪を減らすためのダイエット法は、各先生によって異なるものの、共通しているのは「いかにして食べる量を減らすか」だ。
それぞれ1〜2週間もすれば、体重が減少し始めたり、腰回りが細くなるなど何らかの結果が見えてくると、先生たちは声をそろえる。早速試してみよう!