平均寿命が延びた今、多くの人にとって“ピンピンコロリ”は夢であり目標。けれど実際は、寿命と健康寿命の間に「ヨタヨタ・ヘロヘロ」とした困難な時期がやってくるのです。そこを明るく生き抜くために、私たちができることはーー。
生活評論家であり、働く女性の支援活動も行う樋口恵子さん(87)。長らく第一線で仕事を続けてきた樋口さんも、自身の寄る年波をひしひしと感じているのだとか。
「みなさんよく『ピンピンコロリといきたい』とおっしゃいますが、私のまわりを見ても、思いどおりの最期を迎えられる人はそうはいません。誰しも、あちこち痛めながら、ヨレヨレになって人生を終えています」
樋口さん自身も70歳を過ぎたころから、体のあちこちが思うように動かなくなり、「それまで当り前にできていたことがそうではなくなるのだ」と自覚するようになった。
「80歳を過ぎ、さらにガクンときた感じがします。たとえば『朝起きる→おなかがすく→食事の支度をする→食べる』という一連の流れが当り前だったのに、目覚めても食欲がわかなくなったのです。調理するのもおっくうになり、今思っても、あれは軽い“老後うつ”でした」
人間が生きるうえで持つ、「ごはんを食べたい」「外に出たい」というごく素朴な欲望が、年をとると、低下、枯渇すると樋口さん。
「5分歩くのも大変で、肉体的にも精神的にもヨタヨタヘロヘロ。私はこれを“ヨタヘロ期”と名付けました。この時期に大切なのは、自分がヨタヘロ期にいることを自覚し、何事にも『エイヤッ!』とかけ声をして取り組むことです」
そして、樋口さんは「ヨタヘロ期」には3つの「ショク」を持つことが大事だと提案する。
まずは“食”。
「もちろんこれは食事を指しますが、ただ食べるだけでなく、おいしく楽しく食べるということ。高齢になるほど食欲は落ちるので、私は親しい助手や関係者を“ごはん友達”にして、週に2〜3度は食事をしています」
次に“触”。
「コミュニケーションです。高齢になると社会と切り離されがちですが、それも自分の発想しだいではないでしょうか。『自分が社会に出られなくなったら、逆に社会を呼び込めばいい』と私は思います。高齢者仲間に、家にあるものを持ち寄って集まってもらい、趣味の会や勉強会をしてもいいし、ただおしゃべりをするだけでもかまいません」
3つ目が“職”。
「さいわい、私は今でも複数の仕事を持っているので、週の半分は外に出かけています。仕事をするとさまざまな人に出会いますし、新しい情報も入ってきて、刺激が絶えません。一方で、わが家に来てもらう助手の中には、少し前まで私より高齢の方もいました。長年の主婦業の成果に、教えられることがたくさんありました。家事も一芸のうち。今後の収入につながる大事な資源なのです」
女性は、社会を活気づける大切な原動力だと樋口さんはいう。
「きたるヨタヘロ期に備え、明るく、たくましく生き抜きましょう」
「女性自身」2020年4月14日号 掲載