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健康寿命が延びるのと同時に私たちが直面するのが、老後に必要となる生活費のこと。まずは現状でもらえる額を把握して、不安があれば50代からでもできる受給額アップのための対策に着手しようーー。

 

「昨年6月、金融庁から報告書が出てからは『老後はそんなにお金が必要なのか』『どうやってお金をためたらいいのか』と、戸惑った人も多いでしょう。そもそも報告書は、総務省の家計調査がもとになっています。『高齢夫婦無職世帯』の毎月の赤字額は約5万円なので、年金で暮らす期間を30年とすると、約2,000万円資産の取り崩しが必要、とされていました。『老後に不足する額はライフスタイルなどによって大きく異なる』ともあり、2,000万円もかからない人もいれば、もっとかかる人もいます。一喜一憂しないことです」

 

そう解説するのは『受給額が増える! 書き込み式 得する年金ドリル』(宝島社)の著者で、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。総務省家計調査(’18年)を見ると、高齢夫婦無職世帯の年金を含めた実収入は月額22万2,834円で、支出は26万4,707円。4万1,873円の不足だ。

 

「ここでよく見ておきたいのは、実収入の大半を占めるものは年金収入であるところです。公的年金は会社員か自営業か、夫婦共働きかなど現役世代の働き方によって受け取る年金額にかなりの差が出てきます。一方で、年を重ねると食事の量が減って食費がかからなくなったり、行動範囲も自宅の周囲に限られて交際費などの支出が減ってきたりすることも考えられます。家計調査の支出ほど使わないという人もいるでしょう。住宅ローンを完済していない人、賃貸住まいの人は居住費がかかるので、収入が減る分、支出の負担が大きく感じられるでしょう。老後の生活費を把握するためには、受け取れる年金額を知っておくことが大切です」(井戸さん・以下同)

 

いまや人生100年時代。健康で長生きしたいと思うと同時に、老後も安心した生活が成り立つのか不安がどうしてもつきまとう。そこで井戸さんに「年金を増やすワザ」を教えてもらった。

 

■「繰り下げ受給」で増やす!

 

老齢基礎年金の支給は65歳からが基本だが、必要であれば60歳から受け取ることも可能。これを「繰り上げ受給」といい、1カ月繰り上げるごとに年金額が0.5%減額される(一部繰り上げをしたときも減額率は同様)。受給開始のタイミングを一度選択したら取り消すことはできないので要注意。

 

反対に受給開始を70歳まで先延ばしする「繰り下げ受給」もでき、この場合1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額。5年間繰り下げて70歳から年金を受け取ると、じつに42%も増額される。

 

「65歳で年間78万1,700円もらえる人が5年間受給を先延ばしすると、年金額は約111万円。約32万円増額します。65歳からの年金受給額を78万円として、男性の平均寿命82歳、女性の平均寿命88歳まで生きた場合の年金の受取総額と、70歳まで受給を延ばした場合の総額を実際に計算して比較してみましょう」

 

【例】65歳からの老齢基礎年金受給額(100%)を78万1,700円とすると

 

〈65歳から受給を開始すると〉
夫=82歳までに受け取る老齢基礎年金の総額
78万1,700円×100%×18年=1,407万600円
妻=88歳までに受け取る老齢基礎年金の総額
78万1,700円×100%×24年=1,876万800円

 

〈70歳から受給を開始すると〉
夫=82歳までに受け取る老齢基礎年金の総額
78万1,700円×142%×13年=1,443万182円
妻=88歳までに受け取る老齢基礎年金の総額
78万1,700円×142%×19年=2,109万266円

 

70歳まで繰り下げると受け取る総額は、男性約1,443万円、女性は約2,109万円となった。これを65歳から受け取る総額と差し引くと、男性は約36万円、女性は約233万円になる。長生きするほどおトクだということがわかる。

 

「もちろん、健康状態に不安のある人は無理は禁物。そうしたケースでは、夫の老齢基礎年金は65歳から、妻の年金は70歳から受け取る、という方法もあります」

 

「女性自身」2020年4月14日号 掲載

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