4月7日に発令された緊急事態宣言が、5月31日まで延長することが発表された。依然として世間は自粛ムード一色。そんななかで、アルコール依存症の増加が危惧される。
「日本には、およそ1,000万人の“プレアルコホリック”の方、つまりはアルコール依存症の予備軍がいるとされています」
アルコール依存症を含め様々な依存症問題に詳しい、大船榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士・社会福祉士)の斉藤章佳氏は、今回のコロナ禍により、プレアルコホリックの問題飲酒が増えることを懸念している。
多くの企業がリモートワークに切り替わるなか、都内の会社に勤務する20代女性Aさんは、現在はリモートで営業の仕事を続けている。もともとAさんの部署内では、同僚間で酒を飲む機会が頻繁にあった。
「私自身、家では、あまりお酒を飲まないのですが、同僚のなかには、お酒を飲む量が増えた人は多いと思いますよ。外で一緒に飲みに行けない分、オンライン飲み会をやっている人もいますし……」(会社員20代女性Aさん)
前出の斉藤氏は言う。
「オンライン飲み会は、つながりを確認する意味ではいいと思います。でも家にいるという安堵感から深酒してしまう人が多い。予め飲む量を決めておくとか、あまり強い酒を飲まないとか一定のルールを決めるべきでしょう」
普段なら生活と折り合いをつけながら、飲酒量を節制できる。だが、ストッパーとなるものがない状況であれば、節制ができなくなる。印刷会社でオペレーターとして勤務している、40代独身男性Bさんも節制できなくなった1人だ。Bさんは晩酌を日課にしていて、本人もプレアルコホリックだという自覚があるという。
「印刷機を動かす仕事柄、家で働くこともできませんし、他にやることもありません。実質無職のような状態です。ちゃんと働いていたときには、発泡酒の500mlを2本くらいでも満足できたのですが、今は連日仕事がないこともあって、日本酒やウィスキーにまで手を出すようになりました」(会社員40代男性Bさん)
先が見通せない不安や、孤独な状況だと、早く酔いたいという理由で、アルコール度数の強いお酒を求めるようになる。なかでも、アルコール度数9%以上のストロング系酎ハイは、斉藤氏の著書『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)でも指摘があるように、問題飲酒のトリガーとなりやすい、危険な酒だ。
「日本酒であれば、一気に飲むということは少ないと思います。ですが、ストロング系は安い上に飲みやすい。コンビニで容易に購入できることもあり、プレアルコホリックの方が、アルコール依存症に移行するきっかけにもなりやすいのです」(前出・斉藤氏)
新型コロナが日常に落とした影は大きい。経済的な打撃のみならず、精神的な負担もはかり知れない。斉藤氏は、08年リーマンショックの直後は、アルコール依存症の相談が増えたことを挙げて、「コロナの終息後も、依存症は大きな社会問題になる」という。