コロナ禍での生活の変化で、認知症の人の約4割が何らかの悪影響を受けていることが、8月に発表された広島大学と日本老年医学会の調査で明らかになった。
調査は6〜7月にかけて、全国の介護施設や医療施設など945施設と、介護支援専門員(ケアマネジャー)751人を対象に、オンラインで実施された。その結果、医療・介護施設の38.5%、在宅で介護支援にあたるケアマネの38.1%が、新型コロナの感染拡大によって「認知症の状態に影響が生じた」と回答した。
調査を行った老年医学・認知症の専門医である、広島大学大学院の石井伸弥特任教授(44)が語る。
「認知症の症状の悪化を防ぐために必要なことは、社会的な役割やつながりを持つこと。今回の新型コロナによって、感染予防のための外出自粛や、家族との面会制限などが行われ、認知症者たちの気持ちはどんどん弱り、不安が強くなって、症状が悪化してしまう大きな要因になっています」
今回調査に協力した施設の回答でも、家族、友人との面会制限を実施した(98.5%)、外出制限(89.7%)、施設へのボランティア訪問を中止した(87.1%)など、入所者の日常的な活動がかなり制限されたことがわかる。
在宅の認知症者に関しては、他人と触れ合う時間が減った(81.6%)、体を動かす時間が減った(77.5%)など、介護支援にあたるケアマネの多くが回答している。
「今回の調査で、施設入所者よりも在宅の認知症者のほうが、身体活動量の低下、転倒といった運動機能への影響は大きいようです。施設内の方以上に、運動をしたり、人と触れ合う機会が減ってしまったからでしょう」
石井教授は、コロナ禍の長期化によって認知機能や身体機能が低下する認知症者が、さらに増えることを懸念している。では、どのような対策を早急にすべきか。石井教授にアドバイスしてもらった。
まず、在宅の場合ーー。
「感染予防のために外出自粛はある程度仕方がありません。自治体などで、高齢者が自宅でできる、運動の手引きのようなものを作っていますので、そういうものを活用しながら、家族が一緒になって体を動かしてあげましょう」
次に施設入居者の場合ーー。
「家族との面会が制限されているところが多いので、別の手段でコミュニケーションを図る。今はオンライン面会をやるところが増えましたが、重度の認知症の方には、意思疎通がうまくいかないことも多々あります。たとえば、家族の近況を伝えるために家族の写真を何枚も撮って、それをアルバムにして定期的に本人に渡したり、ボイスレコーダーに家族の近況を伝えるメッセージを録音して聞いてもらうのもいいでしょう。これは施設入所者だけでなく、離れて暮らす在宅の親にも効果的です」
気がついたら親が“ボケていた”なんてことがないように、対策を心がけよう。
「女性自身」2020年9月15日 掲載