「私が書くドラマのヒロインは、みな占い師時代に出会った誰かがモデルになっているような気がしますね」
そう話すのは、いまや押しも押されもせぬヒットメーカーである脚本家の中園ミホさん。初の占い本『占いで強運をつかむ』(マガジンハウス)を出版したところベストセラーに。そして占いサイト『中園ミホ 解禁! 女の絶対運命』は、四柱推命をベースにしたオリジナル占術が「驚くほど当たる」「希望が持てる」と話題を呼んでいる。
それにしても脚本家として不動の地位を築いたこのタイミングで、なぜ占い師としての活動を大きく展開し始めたのか。
「私は人間ウオッチングが趣味なのですが、幸運の波は誰のところにも公平に訪れるようです。それなのに、その波にうまく乗り切れない人が多いような気がして。もっと人生のなかに占いを取り入れて、目の前のチャンスをつかんでほしいと思うんです」
あまり知られていないが、中園さんの前職は占い師。20代半ばまで活動し、政財界の名だたる大物を鑑定することもあったという。
「占いの大家・今村宇太子先生のアシスタントをしていたのですが、先生は霊感が強く、負のエネルギーを持った人が来ると『今日はあなたが占って』と言うことも。それで、代理で私が鑑定することが増えていったのです」
そしてこの経験が、後に脚本家としての土台に。中園さん自身も人生の岐路に立たされると、占いを手がかりに選択・決断してきたという。
最初のターニングポイントとなったのは、脚本家としての第一歩を踏み出したとき。大学卒業後、広告代理店でOL生活を送るも1年3カ月で退職。占いのアシスタントをしながら、脚本スクールへ通った時期があった。このときできた著名な脚本家・桃井章氏との縁で、ある日、刑事ドラマの執筆を任される。
「きっかけは、忙しい桃井先生の執筆のお手伝いをしたこと。『とりあえず下書きでもいいから書いて』と言われ、思いがけないチャンスが舞い込んだと感じました。それまでぐうたら人生だった私の頭の中には、書かない言い訳がぐるぐる。けれど、今村先生に相談すると、『いま書かなければあなたの人生は開花しない』と背中を押されたのです」
占い師としての生活から一転。
「幸運は、いつまでも待っていてくれるほどお人好しではありません。『いまだ!』というタイミングでつかまなければシャンパンの泡のように消えていってしまう、と悟ったのです。そうして遊び好きの私が1週間、寝食を忘れて取り組んだのが犯人の捕まらない刑事ドラマでした(笑)」
しかし、その後も順風満帆だったわけではない。28歳でデビューしたものの、拘束時間の長い連ドラは避けるなど、どこか仕事に向き合い切れずにいた中園さんの運気が爆上がりしたターニングポイントは33歳のとき。
中園流の占いにある12周期でいうと、それは「縁起」の年。「今年は決断の年になるはず。結婚するのかな?」という漠然とした予感を抱いていた中園さんに訪れた一大事は、予期せぬ妊娠だった。
「この年に決めることはとても重大だという覚悟はしていたけれど……。産まない選択もふくめて3日間悩み抜きました」
産まない方向に気持ちが傾いていた間、気持ちが塞いで食べ物がまったくおいしくなかった、という中園さん。
「3日目に、産む方向で考えてみると途端に食べ物がおいしく感じられて、産もうと決めました。いま思えば人生最良の決断でした」
実は、中園さんの占いの運命星は『食神』。「食べ物がおいしく感じられることが、決断のバロメーターだ」と痛感したこの判断は正しく、未婚の母として出産後、大きく運勢が好転していく。
「息子を産んでからは『この子を餓死させるわけにはいかない』と、やっと人生に気合が入った感じでした。産んでいなければ、脚本家を続けていたかどうかさえわかりません」
当時のテレビ業界はパワハラ・セクハラが当たり前。女性脚本家が生まれては消える、死屍累々の劣悪な環境だった。
「それまではいつも『この作品を最後に辞めよう』と思っていましたが、子どもを産んでからは、『もうこの仕事しかない』と腹をくくりました」
この誓いを立てたときに買い求めたのが、インドの神様「ガネーシャ」の指輪。産休をとったため、当時の預金残高1万5,000円まで減っていた。
「息子をバギーに乗せて自宅近くの安養院というお寺にお参りしたとき。そこの北インド・チベット仏教美術展の売店で『働き者になって困るほどお金が入ってくる』という文句に惹かれ、思わず7,000円のガネーシャの指輪を買ってしまったんです。帰宅すると、テレビ局から仕事の依頼が。怠け者でまったくお金が貯まらなかったそれまでの生活から一変。みるみるうちに残高が増えていきました」
産後の復帰作、シングルマザーのヒロインを描いたドラマ『FOR YOU』(’95年)が高視聴率を記録。その後、林真理子さん原作のドラマ『不機嫌な果実』(’97年)の成功で恋愛モノの執筆が続々と舞い込み、さらに人生のステージを引き上げていく。
中園さんの占いで肝心なのは、人生のサイクル12年周期のなかで必ず巡ってくる冬の時期、「逢魔」「空亡」「未明」を「決して悪い時期ではない」ととらえること。この期間を「修行の時期」ととらえ、真摯に向き合うことで運気は上昇すると説く。
そして、特に大事なのが、「空亡期」と位置付けられている「逢魔」「空亡」の2年間の過ごし方。実際、中園さんの出世作『やまとなでしこ』(’00年)、『Doctor-X 外科医・大門未知子』(’12年)、『花子とアン』(’14年)はすべてこの空亡期に書かれたものだ。
「占いをよく知る人は、この時期を恐れている人が多いんです。私もかつてはこの時期に引き受けて大丈夫だろうかと不安になり、霊能者の方に相談したりもしました。いまになってわかった法則は、空亡期とは人生の課題が降りかかるとき。確かにトラブルは頻発しますが、決して恐れる必要はないのです。逆に難題から逃げずに向き合うことで、その後の10年を豊かに過ごせるようになります」
「女性自身」2020年9月29日・10月6日合併号 掲載