子どもの教育費が終わりに差し掛かると、急に不安になる老後資金。「2,000万円不足」だとか「2,000万円では足りない」とか不安が募るばかりだが、いずれにしても、退職金が頼みの綱という人が多いだろう。
「少しでも多く」と望んでも、コロナ禍のいま、日本は景気低迷のどん底だ。退職金が削られることはあっても、増えることなどないのでは……。
「退職金はちょっとした工夫で、手取りを増やすことができます」と言うのは、シニアマネーコンサルタントとしても活躍する税理士の板倉京さん。
「退職金を一括で受け取った場合には、『退職所得控除』という大きな非課税枠が設定されています。これを最大限活用することで、退職金の手取りが変わってくるのです」
ちょっとした工夫とは、ズバリ受取り日だ。
「大きな非課税枠である退職所得控除は、勤続年数によって決まります。勤続20年以下の方なら、退職所得控除は40万円×勤続年数。勤続20年超なら、40万円×20年+70万円×(勤続年数-20年)が非課税となるのです。
退職金にかかる税金は、退職金から退職所得控除分を差し引き、さらに2分の1をかけた額に、税率をかけて算出します。つまり、退職所得控除を増やすことができれば、退職金から差し引くことのできる非課税枠が増えて、納税額が減るということです」
退職所得控除を増やせばいい、と言うのは理解できたが、どうやって増やすのかが問題だ。
「実はもうひとつ、ポイントがあるんです。それは勤続年数の数え方なのですが、『端数切り上げ』なんですよ。
たとえば4月1日に入社した方が、翌年の3月31日に退職すると勤続年数は『1年』ですが、4月1日に退職すると『まる1年と1日』ですから、端数を切り上げて『2年』とカウントされるのです」
20年以上勤めた方が、勤続年数を1年増やすと、非課税枠が70万円増える。これで納税額を計算すると、退職金の額に応じて変わる所得税率にもよるが、約5万~20万円納税額が減る。ということは、手取りが増えるというわけだ。
「会社の規定で、退職日が決まっている場合は仕方ありませんが、自分の都合で退職日を選べる会社も少なくありません。特に、中途退職の方などには自由度が大きいと思います。
入社日を確認して、勤続年数を増やすように退職日を設定するだけで、退職金の手取りが増えますから、ぜひ覚えていてください」
板倉さんが上梓した「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解 ――会社も役所も教えてくれない手取りを増やす45のコツ」(ダイヤモンド社刊)には、ほかにも、目からウロコのお金を増やすコツが登場する。これらを実践して、豊かな老後のためにせっせと蓄えよう。