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ある日突然、激しいめまいに襲われて耳鼻科に行き、「良性発作性頭位めまい症」と診断された本企画担当編集Y。その悩みを病気企画を担当することの多い記者Mに相談すると、なんとMも同じ病気の持ち主だという。そこで、2人を悩ませるこの病気について取材。前のめりで知り得た情報を、同じ悩みを持つあなたにお伝えしますーー!

 

「ある日突然、天地がひっくり返ったような激しいめまいに襲われて、『何か大変な病気では?』と不安になる方もいらっしゃるでしょう。めまいやふらつきに悩む人は、日本全国で約300万人にのぼるといわれ、そのうちの9割が耳に原因があります。耳の奥にある内耳には、体の回転感、傾きや重力などを感受して体のバランスをつかさどる三半規管、耳石器という部位があり、ここに問題があるとめまいが起こります」

 

そう話すのは、めまいの権威として知られる、横浜市立みなと赤十字病院めまい・平衡神経科部長の新井基洋先生。

 

「耳の病気によるめまいといえば、メニエール病でしたが、今はかかる人は10%ほどで、Mさんや編集のYさんがかかった『良性発作性頭位めまい症』が最も多いのです。どんなときにめまいが起きて、同時に頭痛やほかの症状があるかどうか。めまいとともに、耳鳴りや難聴を伴うとメニエール病や突発性難聴が疑われます。症状をメモに残しておき、医師に伝えると、正しい診断につながります」(新井先生・以下同)

 

良性発作性頭位めまい症とは、内耳の耳石器の耳石がはがれて、三半規管に入り込んで生じるめまいのこと。「一度だけでなく何度もめまいが起きる」「洗顔やお辞儀で顔を下に向けたとき」や「上を向いて目薬をさすとき」など、頭を動かしたときにめまいを感じるのが特徴という。

 

「更年期以降の女性は女性ホルモンの減少とともに、カルシウムが不足し、耳石がはがれやすくなります。耳石は直径0.01ミリで1万粒あり、それが多数はがれて耳石塊になり三半規管に入ると、頭を動かすたびに、耳石塊が動いてめまいを感じるのです」

 

めまいを何回も起こしている人は、体を動かすのが怖くなり、つい安静に過ごしたくなるが、新井先生は「寝ていてばかりいても、めまいは治りません!」とキッパリ!

 

「怖くて体を動かせないとためらう人も多いでしょうが、寝てばかりいては、いつまでもめまいから解放されません。それどころか弱っている平衡機能はますます鈍り、どんどん悪化していきます」

 

めまいをそのままにしておくと、年齢とともにふらつきが強くなるという。転倒リスクが高くなるとともに、骨粗しょう症の人が転ぶと骨折するリスクも高くなる。生活の質を下げないためにも、長引かせないでしっかりと治そう。

 

めまいを治すポイントは「小脳を鍛える」こと。小脳を鍛えることで内耳のどこかで障害が起きても、うまくバランスがとれるようにする「中枢代償」という作用が働くという。そこで、新井先生がめまいを解消するために考案したのが「新井式めまい体操」。今回は3つの体操を教えてもらい、記者もさっそくトライしてみた。

 

「これらの体操は目と耳と足の裏を有効に刺激して平衡感覚を鍛えます。慣れないうちは1から10まで数えながらやってみて、できるようになったら20まで増やして、3つの体操を1セットにして朝と夜に20分ほど行いましょう。これを毎日、1カ月ぐらい続けると改善がみられるでしょう」

 

■体操1「振り返る」

 

「人に呼ばれて振り返る」「頭がふらついて車庫入れができない」などの症状を訴える人に効くのが「振り返る」体操。

 

(1)体の正面で親指を立てる。
(2)親指を見ながら頭を左右に30度ずつ回す。

 

「右利きの人は右手を前にしっかり伸ばし、親指を立てます。目は右手親指の爪を見ながら、頭を左右30度ずつ回します。頭(首)を動かすことで小脳が鍛えられます。初めはゆっくりカウントして、慣れたら早くしてみましょう。親指を見続けるのは難しいと思うでしょうが、クラッとしてもやめないで続けましょう」

 

■体操2「50歩足踏み」

 

「外出したい、車の運転もしたい。でも、今日はめまいが起こるかどうか心配……」という人におすすめなのが「50歩足踏み」。

 

(1)両手を肩の高さまで上げ、まずは50歩足踏みを行う。慣れたら目を閉じて行う。
(2)終わったら目を閉じてみて、左右45度以内の傾きであれば、外出してもOK。

 

両手を肩の高さまで上げ、目を閉じて50歩足踏みをしてから、今度は目を閉じながら50歩足踏みをする。

 

「目を開けてみて、自分の立っている位置を確認します。左右各45度以内に立っていたら外出してもOKです。45〜90度以内であればスーパーの買い物など近場の外出にとどめておきましょう。それ以外の位置に立っていたら、外出すると危険なので控えたほうがいい、という目安になります」

 

自分の体調をチェックしながら、ふらつきを解消できる体操だが、角度についてはあくまで目安。体操後の傾きやブレの大きさを見て、自分で判断しよう。

 

■体操3「上下」

 

「顔を洗う」「掃除機をかける」など下を向いたときや、「目薬をさす」など見上げたとき、頭を後ろに向けるときにクラッとする人は「上下」の体操をやろう。

 

(1)腕を伸ばして、右手の親指で左側を指す。
(2)親指を見ながら頭を30度ずつ20回、上下する。

 

「腕を伸ばして、右手の親指で左側を指します。親指を見ながら頭を30度ずつ20回、数を数えながら上下してみましょう。首が悪い方や高齢者はゆっくり数を数えて、10回くらいからスタートしましょう」

 

記者の場合、体操を続けるうちに激しいめまいやふらつきはなくなったが、相変わらず、美容院のシャンプー台など、頭を後ろに倒すときにグルグル目がまわっていた。根気よく続けていくとこれらの症状も解消されるという。

 

また、めまいを悪化させないために生活で気をつけるポイントが次のとおり。

 

【1】まくらを高くして寝る

はがれた耳石が三半規管に入らないように、まくらを高くして寝るようにするといい。上半身を斜めにして寝るのも可。

 

【2】同じ姿勢で寝続けない

同じ向きに頭を横にして寝ていると、下側の三半規管に耳石がたまりやすくなる。横向きで寝そべってテレビを見るのもダメ。

 

【3】アルコールは飲まない

アルコールは小脳の機能を鈍らせる傾向があるので、ふらつきが強まる恐れが。めまいが治るまで飲まないほうがいい。

 

【4】骨密度を上げる生活習慣を身につける

カルシウムが含まれる食品を多く取る、ビタミンDを取り日光浴をするなど、骨密度が上がる生活習慣を続けるといい。

 

【5】ストレスをためない

「めまい」を気にしすぎて、ふさぎ込んでしまうのはよくない。適度に体を動かすなどのリラックスを心がけるように。

 

「はがれた耳石は寝ているときに三半規管に入ることが多いので、まくらを高くして寝ること。右下や左下など同じ姿勢で寝続けないようにしましょう。また、アルコールは小脳の中枢代償の機能を鈍らせてしまうので、ふらつきが強まる恐れがあります。更年期以降の女性は特にカルシウム不足になりますので、魚や牛乳などの食品を取るように。ストレスはめまいの大敵なので、病気を気にしすぎて神経質になりすぎないで、リラックスを心がけましょう」

 

めまいは治らないとあきらめないで、毎日体操を続けてつらい症状とオサラバしよう!

 

「女性自身」2020年12月29日号 掲載

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