「足の裏というのは、その小さな面積に全ての体重がかかるので、なんらかのトラブルが生じると、途端に歩行しづらくなります。普通に生活していても1日5,000〜6,000歩は歩くわけですから、歩行に支障を来すと、日常生活に及ぶ影響は計り知れません」
そう語るのは、『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(日経BP)著者の1人で、下北沢病院の菊池守院長。
年齢とともに、足のトラブルに悩む人が増えている。何もケアをしなければ「足の耐用年数」はおよそ50年。また、加齢とともに歩く機能が衰えてしまうと、要介護状態になるのも早くなるという。そんな事態を防ぐためには日々の“足のセルフケア”が必要だそう。
「歩行機能をキープするには、まずは毎日歩くことです。1日8,000歩が理想的という研究データもありますが、歩数にこだわる必要はありません。快適に歩けていればいいので、足に痛みを感じたら、無理をせずにペースを落とすようにしましょう。足というのは、痛みが生じたからといって安静にしておくことが難しい場所ですから、一度無理をしてしまうと、簡単には回復できません」(菊池院長・以下同)
さらに菊池院長によれば、歩く姿勢を正す、足の筋肉を鍛える、靴選びを工夫するなど、ふだんからの予防=セルフケアによって、足のトラブルは未然に防ぐことができるという。
ただし、正しいセルフケアをするには足に対する正しい知識が欠かせない。まずは人の「足」の機能を見てみよう。人の体重を支える「足」の骨には、縦方向と横方向に弧を描くように3つのアーチがあり、それらが体重を分散するようにして体を支えている。
かかとと小指の付け根を結ぶ「外側の縦アーチ」、かかとと親指の付け根を結ぶ「内側の縦アーチ」、5本の指の付け根を結ぶ「横アーチ」の3つで、このうち加齢とともに崩れてきやすいのが「内側の縦アーチ」で、「扁平足」原因になりやすいという。
「扁平足になると足を前に進める力が弱くなり、ペタンペタンと歩くようになります。すると、足が疲れやすくなったり、だるくなったりするだけでなく、外反母趾などの変形障害が起きやすくなってしまいます。ではなぜ、アーチが崩れてくるのかというと、それは加齢とともにアキレス腱が硬くなってくるからだと考えられます」
歩行のとき、足は、かかと、足首の関節、MTP(指の付け根の関節)を順番に回転させて、体を前に進めていく。アキレス腱が硬いと、すねが前に倒せないため、代わりに「内側の縦アーチ」をつぶすことによって、すねの骨を前に倒すようになる。これによりアーチに過剰な負荷がかかり、トラブルのもとになるというのだ。
「アキレス腱の硬さのチェック方法は簡単。直立した状態で足を一歩後ろに下げ、前側の足をゆっくりと曲げます。このとき、後ろ脚のすねが10度前傾できていれば問題ありません」
さらに、アキレス腱が硬いとふくらはぎの筋肉がじゅうぶんに使えないため、脚の血行が悪くなり、冷えやむくみの原因にもつながっていく。
「新型コロナの影響で外出する機会が減ってしまい、『久々に歩いてきたらこんなに疲れるとは思わなかった』という患者さんも多くいますが、外出不足になりがちなときだからこそ、日々の“セルフケア”で足のアーチをきちんと保ち、アキレス腱をやわらかくしておきましょう」
「女性自身」2021年3月16日号 掲載