10代の“思春期”が大人になるためのステップだとしたら、“思秋期”は高齢期に入る前の準備段階。脳で一番に萎縮していく前頭葉をこの時期に鍛えて、老化を遅らせようーー!
「40~50代くらいから、脳の中にある前頭葉の劣化が始まります。人間の脳は年をとると萎縮し、老化していきます。その脳の中で最も早く萎縮するのが前頭葉。この前頭葉を高齢になる前の“思秋期”に鍛えることで、ボケを遅らせることができるのです」
こう語るのは、『医者が教える50代からはじめる老けない人の「脳の習慣」』(ディスカヴァー携書)の著者で、老年医学の専門家である和田秀樹先生。
超高齢化社会へと突き進む日本。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、’25年には日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合が30%に達するという。
また、厚生労働省の推計では、現在65歳以上の認知症の人の数は約600万人だが、’25年には約700万人となり、高齢者の約5人に1人が認知症になると予測している。
超高齢化による認知症対策は、すでに待ったなしの状態だが、前出・和田先生は“思秋期”に前頭葉を刺激することで、老化の始まりそのものを遅らせることができるというのだ。
■“思秋期”の過ごし方で老化を遅らせられる
「私が考える“思秋期”というのは、中年と老人の間の時期。年齢でいうと、男女共に50~70歳ぐらい。これから高齢期をどう迎えていこうかと考える期間です。たとえば、70代になってもバリバリ働いていてリタイアしない人は、日常的に前頭葉が活発に機能しているので、若々しい。80歳になっても“思秋期”が続く人もいます。いっぽう、定年後に何もせず、60代で“思秋期”を終えて、早く老化してしまう人もいます」(和田先生・以下同)
前頭葉の機能が落ちると、自発性や意欲が減退し、感情のコントロールが利かなくなる。また思考の切り替えが悪くなり、新しい発想や創造性がなくなるそうだ。
「たとえば、外食は行きつけのお店しか行かない。あるいは同じ著者の本しか読まなくなる。料理のレシピが増えない。会話もワンパターンのことしか言わなくなる。さらに、“あれ” “それ”と、人や物の名前が出てこなくなったり、一度怒りだしたらブレーキが利かなくなるような症状があれば、前頭葉が衰えてきていると自覚したほうがいいでしょう」
【“思秋期”チェックリスト】
□ 人・物の名前がなかなか出てこない
□ 行く店がいつも決まってきた
□ 同じ著者の本ばかり読む
□ 料理のレシピが増えない
□ 似た服ばかり着てしまう
□ 同じことを繰り返して言いがち
□ 怒りだしたら止まらない
□ 全体的に意欲が落ちた
では、どのようにすれば前頭葉が鍛えられるのか。和田先生によると、いつもと違うことに挑戦することが最も効果的だという。
そこでボケないための“思秋期”の8つの過ごし方を、和田先生にアドバイスしてもらった。