画像を見る

部屋をスッキリさせたい、片づけたいと思いながらも、「もったいない」と衣類を捨てられない人は多い。子どもの学生服など思い出の品はなおさらです。しかし、困っている人の助けになるなら手放しやすいのではないでしょうか。そこで、制服の「リユース」について経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

 

■学生服の平均価格は5000円上がっている

 

持続可能な社会を目指すSDGsの推進、また、困窮するひとり親家庭などへの支援のため、自治体が使わなくなった制服などをゴミにせずに集めて、希望する方に配って使ってもらう「リユース」に取り組んでいます。

 

大阪府堺市のリユース制服×ひとり親応援プロジェクト「Re制服」は、市が学生服の寄付回収ボックスを、ドラッグストアなどの協力店に設置します。集まった学生服は、提携のリユース店が洗濯・補修し販売しますが、困窮するひとり親家庭には市が半額クーポンを配布。このクーポンを使えば、通常のリユース価格の半額で制服が買えるという取り組みです。

 

集めているのは堺市内外の幼稚園〜高校の制服や体操服、通学カバンなど。寄付できるのは今使われているデザインのものに限られますから、注意してください。

 

京都府宇治市の「制服リユース」は、宇治市立中学校の制服のほか、体操服や柔道着などを市役所にて無償で引き取り、無償で提供しています。提供先を限っていないので、サイズアウトや破れたときなど、だれでも利用できます。

 

山口県宇部市の「子育てグッズ・子ども用スポーツグッズリユース事業」は制服のほか、鍵盤ハーモニカなどやスポーツ用品、ベビーグッズも回収し、必要な方に無償で提供しています。

 

ほかにも千葉県船橋市や栃木県鹿沼市などでも制服のリユースが行われています。

 

また、民間の制服リユース店も増えています。’11年に香川県高松市で開業した「学生服リユースShopさくらや」は、当時、中古制服の販売がないと知ったシングルマザーが始めました。制服を買い取り、地域の手を借りて洗濯・補修し販売する系列店が、今では全国に60店舗あります。

 

’17年に開業した石川県金沢市の「リクル」は、「卒業式は出席したい」不登校児や、就職面接や卒業式で「きれいな制服が着たい」といったニーズに応え、中古制服のレンタルも行っています。

 

学生服の平均価格は、’15年の約3万1000円から、’22年には約3万6000円と約5000円上がっています(総務省・男子学生服)。加えて、体操服や学生カバンなどをそろえると7万〜8万円かかることもあり、厳しい家庭も多いでしょう。

 

身近な場での“おさがり”がほとんどない今、本来なら国が国民の暮らしに配慮した施策を行ってほしいところですが、“見る目”のない政権が続いています。住民の暮らしに寄り添う自治体が広がっていくことを期待して、私たちは物をムダにしないリユースをもっと活用したいと思います。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

【関連画像】

関連カテゴリー: