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アメリカのバイデン大統領は8月24日、学生ローンを借りている方に1人あたり1万ドル(約140万円)の返済免除を発表しました。対象者は4300万人で、うち2000万人は債務がゼロに。一方、日本では奨学金地獄続いています。そんな日本の奨学金について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。

 

■国葬に2億5000万円より、子どもや学生に支援を

 

アメリカの学生ローン返済免除は、11月の中間選挙に向けた“バラマキ”政策の一環だと思いますが、日本の奨学金返済者にはうらやましく映ったでしょう。

 

日本では、大学生の約半数が何らかの奨学金を受給しています(’22年・日本学生支援機構)。平均すると、借入総額は約324万円。月1万6880円(年約20万円)を14.7年かけて返済します(’19年・労働者福祉中央協議会)。

 

ただ、就職先がブラック企業で退職に追い込まれたり、非正規雇用で収入が安定しない方も多いためか、奨学金の延滞者は約29万人。延滞者の約半数は年収200万円以下というデータもあります(’20年度末・日本学生支援機構)。

 

こうした延滞には厳しいペナルティがあります。延滞期間が2カ月目から最低3%の延滞料が加算され、3カ月たつとブラックリスト入り。さらに4カ月以降は民間の債権回収業者が取り立てを行います。奨学金には返済の猶予制度がありますが、返済を待ってくれるだけで1円たりとも減りません。

 

そんななか、岸田首相は奨学金の「出世払い制度」の検討を始めました。出世払い制度とは、在学中は奨学金の返済を国が一時的に肩代わりし、就職後は年収300万円以上など一定水準を超えたときに返済するというものです。

 

これで低所得時の返済は猶予されますが、単なる先送りにすぎません。返済がいつ終わるのか見えないまま、自分の奨学金返済に手いっぱいの方は、わが子の教育費まで手が回らない。だから子どもは持てないと考える人もいるのではないでしょうか。

 

また、返済不要の給付型奨学金について収入制限の緩和を検討するようですが、教育費負担の重い理系や多子世帯に限定だそう。もっと幅広い支援が望まれます。

 

さらに心配なデータがあります。一般社団法人ひとり親支援協会が6月、低所得のひとり親世帯を対象に、コロナ禍の生活について聞きました。物価高騰などにより「生活が苦しくなった」「少し苦しくなった」と答えた世帯が92.3%。ひとり親の9割超が生活苦を訴える異常事態です。

 

岸田首相は「新しい資本主義」の中心課題として人への投資を掲げています。それなら、学生や子育て世帯への支援が急務でしょう。

 

しかし、日本はGDPに占める教育支出の割合がOECDで最低水準です(’21年)。教育にお金をかけないツケは次世代が育たないばかりか、ワクチン開発などで欧米に後れを取るなど、私たちの生活を揺るがしかねません。

 

安倍元首相の国葬に約2億5000万円、警備費は何十億円かかるかわからないといわれますが、私たちが納めた税金の使い道を間違えないでいただきたいものです。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

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