「17歳の愛猫が老衰で亡くなる看取りに飼い主の女性と立ち会ったときのことでした。その女性の悲嘆ぶりは本当に肉親を失ったときと同じようでしたが、きちんとお別れをすることで、悲しみを癒すことができるのを、そばで見届けることができました」
こう話すのは、30年にわたって、看取り士という立場で亡くなる人、見送る人を支える活動を続けている柴田久美子さん(一般社団法人日本看取り士会会長)。柴田さんは自らこれまでに250人ほどの旅立ちの手伝いをしてきた“看取りのプロ”だ。
「いまは起きてから寝るまでペットとずっといっしょにいる人も多い分、失われたときの喪失感は非常に大きいもの。亡くなったペットの顔が頭をよぎって仕事が手につかない。ボーっとしてしまう。知らないうちに涙がこぼれる。症状はさまざまですが、ペットロスの症状を抱え、乗り越えられずにいる人が多くいらっしゃいます」
■死後7日間はふだんどおりに食事をあげ、話しかけよう
こうしたペットロスの悲しみを癒す看取り方として、柴田さんは次のようなお別れ方を提案する。
「自宅で見送る。病院で亡くなる。あるいは事故で亡くなったり、ある朝突然冷たくなっていたり、亡くなり方はさまざまですが、死に付き添えるときは【1】から順に、突然亡骸を前にしたときは、【3】からのお別れを順に行ってください」
ペットの臨終に立ち会えたときは、傍目を気にせず、自分の悲しみの感情を思い切って出し切ることが肝心と、柴田さんは話す。
「身近な人が亡くなるとき、その手を握っていると自然と『ありがとう』と感謝の言葉が出てくるもの。同じように『そばにいてくれてありがとう』と口に出して伝えてあげてください。その気持ちは必ずペットに伝わります」
いまの日本では、生命は亡くなるとすぐにこの世からいなくなるという考え方が一般的だが、多くの臨終に立ち会ってきた柴田さんの考えは少し異なる。
「亡くなる前後からご遺体のそばにいて感じるのは、命は断ち切られるように終わるのではなく、心臓の鼓動は止まっても、命自体はだんだんと失われていくように思えてなりません。亡くなって7日間はまだ自宅にいらっしゃると思って、ふだんどおりに食事やお話をしていると、『ふと気配を感じた』という方が多くいます。できればペットも同じようにお見送りしてあげてほしいんです」
このようにして“初七日”をともに過ごしたのち“四十九日”まで、ゆっくりとお別れをすることで、看取った人の喪失感も次第に薄れていくという。
「それでもペットロスに苦しむときは、無理に忘れようとせず、一人になって、布団の中で、枕をペットと思って抱きしめ、思い切り泣いてみてください。そして再度“初七日”からのお別れをくりかえしてみて。心の中できちんとお別れを済ますことができれば、悲しみは必ず和らいでいきますよ」