4月13日、全国的に黄砂を観測(風景は都内の様子/写真:共同通信) 画像を見る

「スギ花粉の飛散は落ち着きましたが、ヒノキ花粉は5月中旬ぐらいまで警戒が必要です。それ以降も黄砂などによる影響で、花粉症の症状に加え、気管支炎の発症が増える危険性もあり、まだまだ油断はできません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、花粉症原因物質研究の第一人者である、埼玉大学大学院理工学研究科の王青躍教授だ。

 

4月14日、岸田文雄首相は、花粉症対策に関する関係閣僚会議の初会合の席上で、「6月までに、来年の飛散期や今後10年を視野に入れた対策の全体像を取りまとめる」と発言。ようやく政府も本腰を入れて対策に動きだした。そんな折、4月中旬に大量の黄砂が日本列島を襲来。目のかゆみ、鼻水、くしゃみのほか、喉の痛みやせきなど、花粉症ではない人まで花粉症と同様の症状に苦しめられる事態が起きた。

 

その大きな要因の1つが、「花粉爆発」だった。黄砂などが引き起こすこの現象を発見した王教授が解説する。

 

「黄砂や自動車の排ガスなどの大気汚染物質が空気中の花粉に触れると、表面が傷つき、そこから水分を取り込んだ花粉が膨張、破裂します。破裂後、花粉のアレルギー物質が細かく砕け、1㍃メートル以下の微小粒子となって空気中を漂います。これを吸い込むと、鼻や喉を通りすぎて、気管支や肺にまで侵入してしまうのです。すると、花粉症の症状だけではなく、深刻なぜんそくなどを引き起こすリスクもあります」(王教授、以下同)

 

王教授の研究によると、花粉が黄砂や大気汚染物質に触れると、その6~8割が爆発を起こすという。さらに、花粉が水分によって膨張し、破裂する現象を引き起こす最も危険な因子となるのが“雨”だと王教授は話す。

 

「降水量5mm以下程度の雨だと、花粉本体の飛散量は減っても、水分によって破裂した微小粒子のアレルギー物質の飛散量は爆発的に増えてしまいます。また、アレルギー物質は湿度が高い環境でも空気中で長く浮遊することがわかっています」

 

例年、黄砂の飛来は5月いっぱいまで注意が必要とされている。特に、今年は例年以上に花粉と黄砂の量が多いだけに、花粉爆発による健康被害には、いっそうの警戒が必要なのだ。コロナ禍が落ち着き、花粉のピークも過ぎて「やっとマスクが外せる」と安心している人もいるだろう。だが……。

 

「飛散した微小粒子のアレルギー物質を吸引しないためには、マスク着用は有効な対策となります」

 

花粉爆発から身を守るために、マスク着用のほかにどんなことに気を配ればよいのか、王教授にアドバイスしてもらった。

 

「天気予報などの情報を注視し、黄砂やPM2.5(微小粒子状物質)、大気汚染などが激しい日にはできるだけ外出を控えることが基本です。特に幹線道路のような自動車の排ガスなどの大気汚染物質が多いエリアは花粉爆発が起きやすくなるので、避けるようにしましょう」

 

過ごしやすい気候になり、屋外での運動も気持ちがよい季節だが、息が上がるような激しい運動には注意が必要。アレルギー物質を吸い込むリスクが高まってしまうためだ。

 

外出から帰宅した際は、アレルギー物質を部屋に持ち込まない心がけを。

 

「家に入る前に、必ず洋服類に付いた花粉を払い落としましょう。脱いだ外出着はすぐに専用の洗濯カゴに入れて、室内着とは分けて洗濯するのも大事です」

 

手洗いとうがいに加えて、鼻うがいも習慣にしたい。そして、部屋着に着替える前に入浴し、髪を洗うと安心だ。

 

新型コロナ対策で、換気の徹底が習慣になった人もいるだろう。

 

「それとは逆行するのですが、外気を室内に入れないために、窓は開けない。できれば、PM2.5対応の空気清浄機を各部屋に設置して、家にいる間は常時稼働させるようにしましょう」

 

少しずつではあるが新型コロナ感染拡大前の日常が戻りつつあるなか、花粉爆発で不調をきたすことのないよう、できる対策を講じていくようにしたい。

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