寒い季節になると、しゃがみにくい、歩きづらいなど、ひざの痛みが原因で生活に不便さを感じる人が出てくる。
「ひざの痛みが現れるのは“モヤモヤ血管”が原因かもしれません」
こう話すのはオクノクリニック総院長の奥野祐次先生だ。奥野先生は、痛みの専門医として、長年多くの患者の血管の状態を見続けていて、痛みと血管の関係についての研究発表も多数ある。先生によると、多くの関節痛の原因は実は血管にあるのだという。
「もともと血管には、新しく生えようとする習性があります。ところが、新しく生える血管はよい働きをするものばかりではなく、病気を悪化させてしまうような『病的血管新生』もあります。私はこれを“モヤモヤ血管”と呼んでいます」(奥野先生、以下同)
血管が新しく生まれると、必ずそのそばに神経も生まれる。異常に増えた病的血管の周りに異常に増えた神経が張り巡り、これが痛みを誘発するのだそう。
「モヤモヤ血管が肩に現れると五十肩、指先に現れるとヘバーデン結節、ひざに現れると変形性膝関節症として痛みが現れます。一度発生すると、なかなか痛みがおさまらないとか、特定の条件下でまた痛みが現れるなど、3カ月以上の長期にわたって続く傾向があります。骨が変形していなくても強い痛みを感じる人がいて、私はこのような場合は『モヤモヤ血管が原因』と考えています」
このモヤモヤ血管は通常のレントゲン検査では映らないため、痛みを訴えて病院でひざのレントゲンを撮っても「そこまで悪くない」などと言われてしまうそう。
若いときはこの血管新生の発生を抑制する働きがあるため、それほど起こらないのだが、年齢とともに抑制力が衰えて、増える。
「女性の場合、女性ホルモンのエストロゲンには血管を正常化し、血管を守る働きがあります。閉経後の女性に心血管の病気が急増するのは、女性ホルモンの低下と関係しますが、ひざ、肩、腰の痛みなどが増え始めるのも40~50代の更年期世代からです」