最長50年、80歳まで借りられる住宅用の「50年ローン」が注目を集めています。
背景にあるのは、住宅価格の高騰です。2025年に販売された新築マンションは全国平均価格が約6千600万円。9年連続で最高値を更新中です(不動産経済研究所)。特に東京23区の新築マンションは1億3千万円超。
一人の収入で組む「単独ローン」では購入できない人が多く、共働きの夫と妻がそれぞれローンを組む「ペアローン」で借入額を増やそうとします。ただ、たくさん借りると返済負担は重くなるので、返済期間を超長期にして、毎月の返済額を抑えようとするのです。
たとえば4千万円を変動金利0.9%で借りた場合(元利均等、ボーナス返済なし)、当初の返済額は35年ローンなら月約11万1千円ですが、50年ローンだと月約8万3千円。また、月11万1千円の返済で50年ローンにすると、借入額は約5千300万円と3割増やせます。頭金が少なくても購入できる物件が増えるでしょう。
住宅ローン比較診断サービスを行うMFSの調査では、東京都の住宅ローン利用者のうち約35%がペアローンを選択。さらに東京都の20代に限ると、ペアローン利用者の半数近くが35年を超える超長期ローンを希望しています。
■今後リーマンショック級の惨事がないといえますか
私は50年ローンに危機感を持っています。最大の不安は金利上昇です。アメリカの住宅ローン金利は2021年の2%半ばから今では6%超。日本でもアベノミクスの超低金利政策の前は約4%でした。日銀が政策金利を引き上げ、今後は住宅ローン金利が従来の4%に近づくという予想もあります。
私は1998年に販売された「ゆとりローン」の悲劇も思い出します。ゆとりローンは当初5年間の返済額を抑え、6年目、11年目と3段階で返済額が上がるものでした。50年ローンで変動金利の場合、返済額が5年間変わらないルールがあり、金利上昇局面では5年ごとに返済額が増えていきます。また、ゆとりローンの最終金利は4%。今後金利が4%に近づくと考えると、よく似ているでしょう。
ゆとりローンの利用者は「返済額が上がっても給料が上がれば大丈夫」と言いましたが、2008年にリーマンショックが勃発。日本でも倒産やリストラが増え、多数の住宅ローン破綻を生みました。今後50年間にリーマンショック級の惨事がないといえますか。そもそも離婚する不安はありませんか。
銀行は50年ローンのメリットを強調します。家賃より安い返済額で家が買える、住宅価格が上昇すれば売却しても儲けが出るなど、お得な投資だと喧伝しています。
なかには貸出条件を年収100万円以上とする銀行も。利用者の返済が滞っても保証会社が代わって返済する仕組みがあるので、銀行は貸せば貸すほど儲かるのです。
“ローン地獄”に陥る危険性があります。50年ローンなんておやめなさい。
【PROFILE】
おぎわらひろこ
家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数
