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「ようやく『愛美利に悪いことをした人に、やっと裁きが下りたよ。みんなの協力で、愛美利の無念を晴らすことができたよ』と言ってあげることができました。でも明るい未来があったはずの娘は、長時間苦しみながら殺されました。懲役10年の判決ですら、軽すぎると考えています」

 

そう語るのは、2年前に長女・愛美利ちゃんを託児所内で失った父親Aさん(50)。6月15日、宇都宮地裁は栃木県宇都宮市の認可外保育施設「託児室といず」の元経営者・木村久美子被告(59)に対して「懲役10年」の判決を下した。

 

事件は2年前の’14年7月26日に起きた。といずに3泊4日の予定で預けられていた山口愛美利ちゃん(享年9カ月)は、施設内で熱中症により短い人生を閉じた。愛美利ちゃんはといずに宿泊中、下痢や38度を超える発熱を発症。だが施設側はこれを放置したままだった。両親は2カ月後、といずの経営者である木村被告や託児所の職員らを保護責任者遺棄致死と暴行罪で刑事告訴。それから2年、ついに両親の涙の訴えが認められたのだ。

 

「この2年間、ずっと目標にしてがんばってきた判決の日を迎え、求刑通りの懲役10年という判決には、安堵しています。愛美利には『3人で乗り越えられたね』と伝えたいですね」

 

と語ったのは母親のB子さん(38)。愛美利ちゃんの両親は裁判直後、遺影に手を合わせ判決を報告。そして本誌記者にこれまでの闘いんについて語ってくれた。両親が本誌に語るのはこれが2度目。昨年【宇都宮乳児死亡事件 両親が告発「娘は託児所に殺された!」】で両親が語った事実は、といずの凶行を明らかにした。

 

しかし父親のAさんは「すべての真実が明らかになったわけでは決してありません」と強い口調で言う。非道な仕打ちでわが子を亡くした両親の悲痛と怒りは、今回の判決だけでは到底消えるものではなかった。

 

「じつは事件直後、警察署の遺体安置所で見た娘には、脚には縛られたような跡、額と目の下には殴られたようなアザ、そして後頭部には大きな擦り傷がありました。愛美利の直接の死因は『熱中症』ですが、全身アザだらけだったんです……」

 

裁判を終えて自宅で向き合った2人は、本誌記者に数枚の写真を差し出した。それは警察の遺体安置所で両親が撮影した、愛美利ちゃんの変わり果てた姿を写したものだった。

 

「生後まだ9か月の娘は殴られ、縛られ、それでも必死に逃れようとした。そして、たったひとつ動かせる頭をせいいっぱい動かしたはずなんです。後頭部の傷はそのときにできたのではないかと思っています。これらのことを『なかったこと』には絶対にしたくありません」(父親Aさん)

 

《他人に自分の子どもを簡単にあずけるなよ》

《なんでそんな託児所を信用したんだ?》

 

愛美利ちゃんの死亡事件後、ネットでは、両親を非難する心ない書き込みも多数あった。それでも、両親が闘いをやめることはなかった。

 

「娘を預かっている間に被告が3時間も外出し、娘1人にしていたことを、本人が裁判でようやく認めたんです。子どもたちをぐるぐる巻きに縛っていたことについても『認可外は補助金が無く、保育料だけで運営をやりくりしなければならない。子供3人を私立の小学校から大学まで入れていたので、お金がとてもかかった。人件費の削減を考えてしまった』と身勝手なことを言っていました。でもじつは、大学生の次男はベンツやポルシェを乗り回していたんですよ」(Aさん)

 

両親が本誌記者に最後に訴えかけたのは、これから子どもを預かろうとする、保育園や託児所への“警鐘”だった。

 

「待機児童の解消が問題になっていますが、今のままで認可外保育施設を増やしていくと、このような事故が起きる可能性もより高くなります。といずの元スタッフは『抜き打ち検査があれば一発で実態が暴かれていた』と話していました」(Aさん)

 

愛美利ちゃんが亡くなる2カ月前、「といずに預けたわが子の生爪がはがれていた」という通報が市にあった。しかし市が行ったのは事前通告の上で30分の検査だけだった。抜き打ちではなかったため、その検査で実態が暴かれることはなかった。

 

「あのときに抜き打ち検査があれば、と思わずにはいられません。といずのように、親をだまして金儲けを考えている認可外保育施設もある。木村被告は元スタッフに『子どもの顔を見るとお金に見える』と語っていたそうです。いまも思い出すと怒りがわいてきます」(B子さん)

 

もう子どもたちにそんな思いはさせたくない――。父親のAさんは、新たに誓った。

 

「これからは娘の死を無駄にしないために、そしてもうこれ以上子どもたちを犠牲にしないために、保育施設への抜き打ち検査を導入することを訴えていきたいです」

 

天国の愛美利ちゃんのために……。両親の闘いはこれからも続く。