「TPP参加で関税撤廃になれば、米も肉も安くなるでしょう。国内の流通コストは今と変わりませんが、牛肉の場合は差し引き3割ほど安くスーパーで売られるようになると思いますね」と語るのは、経済アナリストの森永卓郎さん(55)だ。

 

4月12日、政府は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加に向けた日米両政府事前協議の合意文書を発表。これにより、日本は7月にも開かれる交渉会合へ参加する見通しとなった。TPPとは、参加国間での関税を撤廃することで、自由な貿易を目指す協定。05年にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国が調印したのを皮切りに、アメリカやオーストラリアなど多くの国々が交渉に参加している。

 

これまで日本は輸入品に高い関税をかけることで、農業などの国内産業を保護してきた。だが関税が撤廃されれば、輸入品はこれまで以上の低価格で日本へと入ってくることになるのだ。そうなれば、家計の4分の1を占めるとも言わる食費をかなり圧縮できるが……。私たちの食卓はどのように変わっていくのだろうか。

 

今回、政府機関などが算出した関税率をもとに撤廃後の価格をシュミレーションしてみた。例えば、森永さんが言うように、牛肉は価格にして3割減。豚肉は半額以下になり、鶏肉も10%程度は安くなりそうだ。さらに家計にとって大助かりなのが、米などを始めとする主食の“爆安化”。米には778%もの高関税がかけられてきたが、参加後はなんとアメリカ産の米が5キロ500円になる可能性もあるという。外国産米を扱う輸入業者がこう語る。

 

「政府は国内産米の価格上昇に合わせて課税率を上げてきます。この4月からさらに値上がりしましたから、現在は1000%くらいにまでなっているのではないでしょうか。関税が撤廃されれば、かなり安くなるのは間違いありません」(米業者)

 

小麦も1キロ200円だったものが40円で手に入れることができるようになり、うどんやパンも、それに伴い安くなると予想されている。

 

「米や牛肉が安くなりますから、これまで手が出し辛かった“食卓の王様”すき焼きは1人前400円程度に。牛丼も150円程度で作ることができるようになるでしょう」(食品流通関係者)

 

とはいえ弊害もある。政府の試算によると、TPPに参加した場合の国内の農業分野は、外国産の輸入拡大にともない生産額が3兆円減少するというのだ。結果、食料自給率は39%から27%に。日本の農業は大打撃を受けることになる。森永さんはこう警鐘を鳴らす。

 

「米も牛肉も高級ブランド品だけは残ると考えられますが、90%の米農家と75%の畜産農家は廃業の危機にさらされるでしょう。それに品質面で危険な食材が押し寄せてくることになります。しかし外食産業が輸入品を仕入れるから、まったく食べないわけにもいきません。TPPは二国間交渉と違い、後から参加した国は以前からのルールに従わなければなりませんから、一度参加すればこの流れは避けられないでしょう」

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