「年間1億食(1食100円として100億円)売れたらヒット商品」といわれる即席めんの市場で、すでに1億7千万食(170億円)を突破(’12年9月末時点)している「マルちゃん正麺」。発売から1年を待たずして、2億食に迫るという驚異の勢いだ。今回は、この空前の大ヒット商品の”生みの親”である東洋水産の担当者たちに、今だから話せる「マルちゃん正麺の開発秘話」を聞いた。
「通常の場合、めんを切り出してから、『蒸し』の工程があります。それから油で揚げるのがフライめん、そのまま乾燥させるのがノンフライめんです。マルちゃん正麺の場合は蒸しの工程がなく、めんを切り出してから、すぐにほぐして乾燥させるという、まったくの新製法のため新しい製造ラインを作る必要がありました。ここに2年かかりました」
そう話すのは、同社即席麺本部・商品開発部の鈴木梨恵さん(25)。開発から発売までに要した期間は約5年。新商品の開発にこれほど長期間かけた商品は「私の知る限りおそらくない」と語るのは、同開発部の神永憲さん(45)だ。
「従来のめんは、長さが40センチ以上の商品がほとんどです。しかしマルちゃん正麺は25~30センチ、従来品の半分程度になっています。開発メンバーのお子さんが、めんを食べるときにズルズルとするのが苦手で、『めんをもう少し短くできないか?』という意見が出てきました。そういった一つひとつの声が、めんの開発の参考になっています」(神永さん)
マルちゃん正麺の袋を開けると、めんが四角ではなく丸型に成形されていることに気づく。これは丸型のほうがほぐしやすいためと、小さな鍋でも作りやすいからだという。また、パッケージは、これまではドンブリを覆うほどの具材をのせた「調理例」の写真を使うのが袋めんの定番だったが、今回は具材を最小限にして、めんを強調するような写真に。さて、生みの親だからこそいえる、おすすめの食べ方は?
「袋めん自体、基本はめんとスープだけで、具材は何も入っていません。私どもの調査では、7割くらいの方が、家にある野菜やお肉を入れて、召し上がっているそうです。そういったデータを参考にして、野菜に合わせて調理しやすいスープにしました。商品のホームページでも、応用レシピや具材について紹介していますので、ご覧になってください。個人的には、野菜炒めをたっぷり作ってめんの上にのせると、香ばしさが増してよりおいしく召し上がれると思います(笑)」(鈴木さん)