「ダイエットがうまくいかない、リバウンドしてしまう、ストレスでつい食べてしまうなど、やせたくてもやせられない原因は、私たちの意志が弱いわけでも、体質のせいでもありません。その原因は脳にあるのです」

 

こう話すのは、アメリカのイェール大学医学部精神神経科卒で、現在、アメリカのトランスホープ・メディカルクリニックで精神科医をしている久賀谷亮先生だ。私たちがつい甘いものを食べてしまったり、たくさん食べたくなってしまうのは、脳の「快楽中枢が刺激されるから」だという。

 

「砂糖や炭水化物といった糖分が体内で分解されると、脳の腹側被蓋野と呼ばれる部分を刺激し、ドーパミンという快楽の脳内物質が分泌されます。この反応は、人間として、ごく自然な反応です」(久賀谷先生・以下同)

 

ただ、脳の快楽中枢は依存しやすく、野放しにしていると、さらに刺激(=快楽)を求めてエスカレートする。こうして、私たちはもっともっと食べる量が増え、ストレスがたまったときに衝動食いをしてしまうのだ。

 

こうなると、私たちの脳は快楽中枢に支配されてしまってコントロールを奪われている状態だ。そのハンドルを奪い返して、脳のコントロールを取り戻さなければならない。そのために久賀谷先生が提案するのが、「30秒間見るだけダイエット」。

 

「食べる前に真剣に食べ物に意識を向けるだけ」で簡単にできてしまう究極のダイエット法なのだ。

 

「この方法は、年齢、性別に関係なく、誰にでもわかりやすく、安全にできます。子どものころから肥満児童の多いアメリカでは、小学校でも盛んに使われている手法です」

 

この方法を実践した8割以上の人に、食行動の改善効果が見られたという報告もあるのだそう。実際に久賀谷先生自身も、この方法で体重8キロ減を実現している。

 

「食べたい、甘いものが欲しいという衝動を抑えられるようになり、遺伝子レベルで変化が起こる可能性すらあります」

 

さらにうれしいことに、「30秒間見るだけダイエット」は、食べたくなっても我慢しなくていいし、食べる量も気にしなくていい。では、その方法を紹介しよう。

 

【1】目の前の料理を30秒間観察する

 

食事を目の前にして、いきなり食べ始めるのではなく、最初に自分がこれから何を食べようとしているのかを、五感をフル稼働して観察しよう。食材の色や形、種類、匂い、音も出るようであれば、音も聞いてみよう。その料理の食材がどこから来て、誰が準備したかなど、目の前に現れるまでの過程について考えてみるのもいい。

 

【2】呼吸に注意を向け、体の内側の感覚を意識する

 

ゆっくりと呼吸しながら、どれくらい空腹なのか、唾液の出る具合など、「今」の自分の体の状態がどうなのかを観察する。

 

【3】「食べたい度」を10段階の数字で表す

 

目の前の料理を観察して、どれくらいそれを食べたいのかを10段階で考えてみる。空腹で「10」かなと思っても、よく考えたら「7」だったり意外と低い場合も。

 

【4】食べたい理由を考える

 

空腹だから? ストレスを感じているから? イライラするから? なぜ食べたいのかには、必ず理由があるので、それを考えてみる。このダイエットは、食前の30秒間を使うことが肝心だ。

 

「30秒間、五感を使って観察することで、いわゆる食欲の“自動運転状態”を解除して、衝動の速度を落としていきます。さらに、自分の状態を冷静に把握することで、“ハンドル”を自分で握り始め、コントロールをするようになるのです」

 

食事中にも変化が表れてくる。口の中で味わい、のどを通る感触、胃に入っていく感覚などを観察するようになるのだ。この方法で、衝動食いが減る、体重が減るだけでなく、血糖値・コレステロール値が下がる、といった効果も期待できるのだとか。

 

「ある糖尿病専門の医師から、なかなか糖尿病食を実践してくれなかった患者さんにこの方法を教えたところ、糖尿病食を食べてくれるようになったという報告がありました。この方法で、糖分やカロリーの少ない食事でも、十分楽しめるようになります」

 

慌ただしい現代人は30秒すら待てなくなっているが、1日の中で食事の時間くらいは、スマホやテレビなどの情報から離れて、頭を休める時間を持ちたい。

 

記者も実際に、ある1日の3食で実践してみた。いつもより食事がおいしく感じ、食後も味の余韻が続いた。さらに、なかなかお腹が減らず、習慣となっている間食をしたいという気持ちにならなかったのだ!

 

「『30秒間見るだけでダイエット』を習慣づけることで、脳だけでなく、体も変化してきます。それを楽しみに、まずは1週間、実践してみてください」