湿度の高い日本の夏は、うねり・べたつきなどの髪悩みが目立つが、「最近髪が細くなって毛先がバサバサ」「抜け毛が増えている気がする」といった悩みを抱えている場合は、季節とは別の要因を疑ったほうがいいかもしれない。
『長生きの切り札! 亜鉛チャージ健康法』(アスコム)の著者でマイシティクリニック総院長の平澤精一医師は次のように語る。
「抜け毛などの髪悩みで受診された方を検査すると、実は亜鉛不足だったというケースも多いです」
近年、亜鉛不足の女性が増えている。なかでも具体的な症状が少ない「潜在性亜鉛欠乏症」と呼ばれる疾患は、50代女性のうちの47.4%が該当するというデータもある(2024年発表の順天堂大学研究グループ大規模調査より)。
「亜鉛は、細胞のDNAの複製やタンパク質の合成に関わっています。皮膚や毛髪、爪などは、亜鉛の働きによって新陳代謝が促されるのです。見た目の若々しさや健康を保つためには、重要なミネラル成分です」(平澤医師、以下同)
亜鉛が不足しているときに起こるサインは抜け毛や皮膚炎、爪が割れる以外にもさまざまだ。
「味覚障害を訴える人もいますね。気付かぬまま放置すると、塩分のとりすぎから高血圧になる危険性も否めません。ほかにも、亜鉛は骨の形成にかかわる酵素の働きを助ける役割があり、不足すると骨が脆くなってしまうこともあります」
亜鉛不足のさらに恐ろしい段階として、平澤先生は「フレイル」を指摘する。
■亜鉛不足は「脳の働き」も悪化させる…
「亜鉛は記憶をつかさどる海馬をはじめ脳のさまざまな部分に含まれていて、不足すると、精神的に不安定になる、記憶力が低くなるなど老人性うつのような症状に。外見の老け込みに加え、精神的な影響で外出が減ると筋力が低下します。放置すると、最悪寝たきりになる可能性があるのです」
亜鉛はこんなにも重要な栄養素ながら、日本人は極端に摂取量が少ない。なんと先進国では唯一、10~30%もの人が潜在的に不足しているのだという。
「和食中心の食生活が要因です。和食に使われる食材は、欧米人が多く口にする肉類や乳製品に比べ亜鉛含有量が少ないのです」
若いころは肉類をよく食べていたけれど、加齢とともに和食中心になることも多い。食が細くなれば、ますます亜鉛不足が加速する。
“亜鉛は長生きの切り札”と語る平澤医師が、こうした亜鉛不足を解消するために、著書の中で管理栄養士の岸村康代さんと考案、紹介しているのが、日本人にはなじみ深い卵かけご飯と味噌汁だ。
レシピは著書内で紹介されているメニューの一部だが、ぜひチェックしてほしい。
「亜鉛の量、吸収効率に加え、一緒に取りたい亜鉛以外の栄養素についても考慮しました」
卵は、特に黄身部分に亜鉛、ビタミンA、鉄、カルシウムなどの栄養素を含んでいる。卵かけご飯であれば、作るのも簡単だ。
最初に黄身と白身を分けて、ご飯と混ぜてふわふわにしておくのがポイント。食の細い高齢者でもさらっと食べやすい。
味噌汁も亜鉛のほか多くの栄養素を含み、特に味噌に含まれる乳酸菌は腸内環境も整えてくれる。
「どのレシピも『煮干し粉』を使用した味噌汁です。煮干し粉でだしを取ることで、より多くの亜鉛やカルシウムが摂取できます」
それぞれのメニューはこんな効果が期待できるという。
「抗酸化・抗炎症作用が期待できるのはブロッコリースプラウトの入ったサバ缶の味噌汁。アボカド入り卵かけご飯は、ビタミンEや食物繊維も取れ、腸内環境の改善にも役立ちます。免疫力対策にはトマトとほうれん草の味噌汁。肌や髪を若々しく保つために必要なタンパク質を含む焼き肉風牛そぼろの卵かけご飯もよいでしょう」
亜鉛は空腹時に吸収率が上がるので、朝食でとるのがおすすめだ。
今日から亜鉛チャージ食を習慣にして、老いに打ち勝とう。
画像ページ >【レシピあり】医師推奨、亜鉛チャージレシピ4選(他2枚)
