今年90歳の創業者、小林日出男さん。今も毎日、夕方から厨房に出ているが、現在メインで店を切り盛りしているのが、2代目の小林一浩さん(46)。先代・日出男さんの親戚で、大学時代に店で居候をしながらアルバイト。大学卒業後、2年ほど会社勤めをしたものの「せっかくの縁だから」と思い直してメルシーで働く事を決める。養子入りして文字通りお店と結婚し、今日まで20年間、先代の味とポリシーを受け継ぎ、守り続けて来た。
 「バイトしてた頃のラーメンの値段? 300円くらいだったかなあ?」と一浩さん。ということは20年で値上げはたったの90円? 「こないだ上げたのが消費税が5%に上がった時。その前が3%の時。今回、油も小麦も上がってるから、そのうち10円か20円上げないといけないけど」心苦しそうに語る一浩さんだが、それでもまだ400円代。なんだか、こちらが申し訳ない気分になる。
 「でも学生街だから。マクドナルドも安いし、牛丼屋も安いしね。うちもなかなか上げられない」。年々増える大手チェーン店。店の入れ替わりの激しいこの町で、ずっとお店を続けてこられた秘訣は? 「(単価が)安いぶん、数出さないと」(日出男さん)「忙しくても雑にならないように作る。いい加減な仕事しちゃうと、ねえ?」(一浩さん)。儲けを考えず、たくさん、手早く、丁寧に作る。毎日毎日、何十年も続けるのって、大変なことだと思うのだ。

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