屋台のおもかげを残す、立ち食いのカウンター。イメージカラーの黄色と一体化した感もある、髄まで煮出した豚骨スープと背脂。日本そば的な醤油味とはまたひとつ違った“古き良き東京ラーメン”の流れを作ったのが、「ホープ軒」のラーメン(700円)だ。

「最初はこんなに濃いスープじゃなかったんですよ。“少し濃い”スープだった(笑)」 店主の牛久保英昭さんは、長い間屋台を引いてラーメンを作り続けてきた。

「実家は浅草で魚屋をやっていたんだけど、東京大空襲で全部焼けちゃってねえ。商人の息子だから、戦後、大人になって、自分で何か商売を始めたかった」

東京ラーメンの元祖と言われている「ホームラン軒」。戦後の復興期には都内に20からの店舗を展開していたというが、やがて経営が立ち行かなくなり、創業者の故・難波二三男さんは屋台での出直しをはかった。難波さんの手による「屋台貸し出し」の貼り紙を、牛久保を目にする。

「弟子入りって感じではなかった。屋台のリースだね。他にも僕と同じ境遇の人間がいたけど、みんなラーメンの作り方は自分で考えてましたよ。だから“これぞ東京ラーメンだ”って、そんな味はなかったんじゃないかなあ?」

日本そばのつゆをベースに、豚や鶏のダシを加えたものが東京ラーメン。それが伝統の味とずっと思っていたが、牛久保さんによると、どうやらそうではないらしい。

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