『若葉』のラーメンは、まさに昔ながらの東京ラーメンの味わい。スープはすっきりした醤油味。豚ガラを6時間かけて煮出し、くさみや脂っこさはていねいに除いてあるので、醤油のまろやかさ、隠し味のカツオ風味が生きている。極細の麺は、見た目以上に腰があって、腹持ちも良い。ネット通販もしている自慢のチャーシューは、薄めに何枚もスライスされ、ライトな口当たりのラーメンとの相性が絶妙。立ち食いならではの、食べやすさに気を使った1杯と言えるだろう。とにかくスルスルいけてしまう。
「昔はおやつ代わりに食べてたと思うんですよね。お客さんの層はガラリと変わりました。この5〜6年で場外市場はずいぶん変わりました。その昔は女子供やよそ者は立ち入れませんでしたからね。昔のお客さんは待ってなんかくれなかったし、それ以前に並んですらくれなかった(笑)。少しでもモタついてたら、スーッとどっか行っちゃったし、『並んでください』なんて言おうものなら…」
戦場のような漁場から来ていた、かつての海の男たち。腰にはマグロをつるす鉤をブラ下げ、ケンカで振り回す者もいたという。わずかな合間の腹ごしらえに、気を煩わせるひまなどなかったのだろう。
「うちでは父の代から極細麺を使っていますが、これも早く茹で上がるからなんです」
鍋に落とし蓋をする珍しい方法で、吾郎さんは麺を茹で上げているが、これもより早く一気に茹で上げるための工夫。この地でお店をやるには、まず第一にお客さんを待たせないことが求められた。