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料理に人生のすべてをかけてきた日本を代表するシェフたちが、人生の終わりに作りたい料理とは、誰のためのどんなメニューなのだろうか? そのときを想像しながら、巨匠が目の前で調理してくれた渾身の一皿。題して『マエストロたちの最後の晩餐』。明日、人生が終わるとしたら、あなたは最後に何を作りますか?

 

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■『銀座久兵衛』2代目店主・今田洋輔さん

 

どこから見ても品のある端正なにぎり。口の中でほどけるシャリは、創業から変わらない酢と塩だけの潔さ。とろける脂を秘めた中トロにも、キリッとしめたコハダにも、素晴らしく調和する。流れるような所作に見とれていると「目指す寿司の形があるんです」と今田さん。

 

「ただ魚がシャリにのるのではなく、ネタとシャリの一体感。自分の美学かもしれませんね」(今田さん・以下同)

 

つけ台に置いたときに、真横から見てほんの少しネタの両端がそり上がるラインが理想だという。その姿形、口に入れたときの感覚を、覚えておいてほしい人がいる。3人のお孫さんだ。

 

「みんな男の子で、いちばん上が小学校高学年。誰かが4代目を継ぐかもしれないし、継がないかもしれない。まだわからないけど、『これがおじいちゃんの最後の寿司だよ』って体に刷り込んでおきたいというか」

 

そういう今田さんは、小学生のときには家業を継ぐと決めていたそうだ。

 

「僕の時代はそれが当たり前でした。当時は併用住宅で、小さなころからお客様あって成り立つわれわれの生活だと身に染みていましたから」

 

本から得た知識ではなく、肌で感じる職人の感性、お客様第一の商売の心得。

 

「職人として大事にするのは手を掛けすぎないこと。自然のおいしさそのものを味わえるのが寿司のよさだと、常連さんだった北大路魯山人さんも仰っていましたから」

 

受け継ぐ心、所作、味、形。すべてを込めて最後ににぎる魂の1貫1貫を前に、未来の4代目候補生たちは何を思うのだろう。

 

【銀座久兵衛

 

’35年創業という老舗の高級寿司店。ウニやイクラの軍艦巻きを考案した店として知られる。食通として有名な故・北大路魯山人がひいきにしており、本館4階にはギャラリーも。

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