「干し野菜はだしがよく出るので、しんなりするまで水分を飛ばした干し野菜と水を土鍋に入れ、ゆっくり火を通せば極上のお鍋に。だしを取らなくてもおいしいです」
こう語るのは、干し野菜専門家の廣田有希さん。著書『干し野菜をはじめよう 太陽の香りがするレシピ100』(文藝春秋)などを通じ、干し野菜の魅力を伝えている。
「野菜は紫外線をたっぷり浴びると味が凝縮してうま味が増すうえ、抗酸化力もアップします。『何日も干すのは面倒』と思われる方も多いのですが、種類によってはわずか半日で作れるんです」
干すとうま味も栄養価も増加するというのは、科学的な裏付けがある。元八戸工業大学教授で、魚や野菜の天日干しについて研究している農林水産物光処理研究所所長・青木秀敏さんに聞いた。
「うま味成分であるアミノ酸、糖分、そして抗酸化力がアップすることが明らかになっています。野菜の細胞は、収穫後もまだ生きています。可視光線を感知するセンサーの“光受容体”を持っているため、太陽光にさらされ、細胞内の水分も減ってくると、野菜は自身の生命の危機と感知します。するとタンパク質の分解酵素を活性化させ、アミノ酸を増加させます。結果、うま味が強くなるんです」(青木さん)
また、野菜は収穫後でも紫外線にさらされると健康成分の合成が進む。
「太陽光を浴びると、野菜は強い光から身を守るためにCやアントシアニン、フラボノイドなどの抗酸化物質を増加させます」(青木さん)
そんな、いいことずくめの干し野菜の作り方を、廣田さんが教えてくれた。
■干し野菜「基本の作り方」
(1)カット
野菜をカットしたら、干す前にキッチンペーパーなどでしっかりと水気をふき取る。
(2)干す
直射日光のよく当たる風通しのいい場所に干す。ベランダでもOK。廣田さんがおススメの干しカゴは“つきじ常陸屋”のものだそう。
(3)取り込む
日中留守にする場合、朝出かける前に干し、夜帰宅して取り込めばOK。2日以上干す場合も夜は室内へ。
(4)保存
冷蔵庫で数日間保存可能。冷凍保存もできるので、まとめて大量に干しても大丈夫。
つぎに野菜別の干し方。
【だいこん】
皮付きのまま干したものをフライパンで焼いてだいこんステーキにすると美味。れんこんも同じ要領で1日ほど干すとおいしい。
おススメのカット:1〜2センチの厚切り
干し時間の目安:半日〜2日。表面がしんなりして少しくぼみ、白くカサカサしたらOK。
保存期間:冷蔵庫で3〜4日
【小松菜】
干して水分が減るとシャキシャキ感が強くなり、そのまま炒めてもおいしくなる。キャベツも同じ要領で1枚ずつ干せばOK。
おススメのカット:カットせずそのまま1株干し。肉厚のものは縦軸を半分にカット
干し時間の目安:数時間〜1日。しんなりしたらOK。
保存期間:冷蔵庫で3〜5日
【えのき】
じっくり干すとしいたけ並みにうま味がアップ!「干しえのき」を入れるだけで味噌汁もだしいらず。しめじも同じく小房に分けて干せばOK。
おススメのカット:小房カット
干し時間の目安:数時間〜1日。だしとして使う場合は、2〜3日かけてカラカラになるまで干す。
保存期間:冷蔵庫で3〜4日
【りんご】
干すことで甘味がぎゅっと凝縮。一度にたくさん干して、“しっとりりんご”にするのがおススメ。冷凍するとシャーベットのようになる。
おススメのカット:スライス
干し時間の目安:半日〜3日
保存期間:冷蔵庫で2〜4日
「だいたいの野菜は半日から1日干せばいいので、朝、出かける前に干し、夕方、帰宅してから取り込むだけでも十分です。大切なのは、布団を干したくなるようなカラッと晴れた日を選ぶことと、夜は必ず取り込むこと。風が少しあるほうが、より乾きやすいです。風通しがよく日の当たる場所なら、室内でもOK。ザルなどでもできますが、干しカゴを使うと衛生的です」(廣田さん)