「いわし缶は、さば缶より安いという何げない理由で注目したのですが、調べてみると、必須脂肪酸であるオメガ3の含有量がさばより多いということがわかり、いわしに注目するようになりました」
そう語るのは内科医の工藤孝文先生。さば缶は「健康にいい」「やせる」と、空前のブームになり、一時期、店頭から姿が消えるほどだった。だが、『女性自身』誌上で「きゅうり食べるだけダイエット」「緑茶コーヒーダイエット」など、ユニークなダイエット方法を提案してきた工藤先生が、今回着目するのは「いわし缶」だ。
青魚には必須脂肪酸のオメガ3系脂肪酸が多く含まれている。必須脂肪酸は私たちの体内では作れないので、食べ物から摂取するしかない脂肪だ。その中のオメガ3には、主にエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)がある。まぐろ、さば、いわし、あじなどの青魚にEPAやDHAが多く含まれていることは、よく知られている。
EPA、DHAには脂肪燃焼効果が含まれるが、EPAにはさらに“やせホルモン”のアディポネクチンの分泌を促す作用があるという。青魚をとることによって、まさに一石二鳥のダイエット効果が望めるわけだ。
青魚の中でもオメガ3の含有量が多いとされているのがさばだが、実は缶詰にすると、さばよりも、いわしのほうが含有量が断然多くなるのだ。
「缶詰には、頭や内臓、骨など捨ててしまいがちな部位も含まれているため、効率よくオメガ3がとれるのです」(工藤先生・以下同)
ちなみに、いわし缶のEPA、DHAは、同じ青魚であるさんま缶の約2倍、ツナ缶だと10倍以上も含まれる。いわし缶は、リーズナブルなうえ、青魚の中で最も効率よくオメガ3がとれる“最強食材”であるといえる。
「私の患者さんたちからも、いわし缶の料理を食べるようになって、『気持ちが前向きになった』『イライラしない』『便通が改善された』などの報告があります。オメガ3が自律神経を整えるため、精神的にもよい影響があるようですし、腸内環境が改善されたり、ストレスによるドカ食いが減るとダイエットにもつながります」
そこで、いわし缶を使ったレシピを紹介。いわし缶を使うことで、面倒な魚の下処理や、さばいたりする必要がなく、準備が簡単に。
■いわしの酒かす煮
【材料】2人分
・いわし水煮…1缶
・酒かす…50g
・湯…50ml
・にんじん…50g
・玉ねぎ…1/2個(100g)
・しめじ…1/2パック(50g)
・だし汁…150ml
・三つ葉…1束
【作り方】
1)酒かすは小さくちぎって湯に浸しておく。
2)にんじんは小さめの乱切りにし、玉ねぎはくし形に切る。しめじは石づきを取り除き、食べやすい大きさにほぐす。
3)鍋にだし汁を入れて中火にかけ、にんじん、玉ねぎを加えて蓋をし、10分ほど煮る。にんじんが軟らかくなったら、しめじ、(1)、いわし缶を汁ごと加えて1~2分煮てなじませる。
4)三つ葉は食べやすい長さに切り、(3)に加えてひと煮する。器に煮汁ごと盛りつける。
酒かすは魚の臭みを取ってくれる効果がある。やさしい甘味と香りで、マンネリになりがちな煮魚の味つけを新鮮なものに。
■いわしの麻辣炒め
【材料】2人分
・いわし水煮…1缶
・木綿豆腐…小1丁(200g)
・わけぎ…30g
・にんにく…1/2片
・赤唐辛子…1本
・A(花椒〔ホール〕…小さじ1、ごま油…大さじ1/2)
【作り方】
1)木綿豆腐は一口大に切る。わけぎは1cm角に切る。
2)フライパンに、つぶしたにんにく、ちぎった赤唐辛子、Aを入れて弱火で熱し、香りが立ったら豆腐を加えて中火にする。
3)豆腐にこんがりと焼き色がついたら、いわし缶を汁ごと加えて汁気がなくなるまで炒め、わけぎを加えてさっと炒める。
辛いものが好きな人はお好みで花椒や赤唐辛子を足してもOK。いわしと豆腐でボリューム満点。
(レシピ作成:検見崎聡美)