納豆、やまいも、なめこ……。日本の食卓に欠かせない「ねばねば食材」だが、なんとなく「健康にいい」とはわかっているものの、裏を返せば“なんとなく”しかわかっていない人も多いはず。
「確かにねばねば食材は、ぬるっとした食感のため、食欲がないときでも食べやすく、スタミナがつく印象が強いかもしれませんが、実際の健康効果はじつに多岐にわたります。ひと言で『ねばねば』といっても、そのもととなる成分はさまざまで、美容・健康に与える効果もそれぞれ。また、1つの食材に複数のねばねば成分が含まれていることも多いほか、ビタミンやタンパク質など別の栄養素と組み合わせることで、さらに健康効果が増すのです」
そう語るのは、管理栄養士の菊池真由子さん。
「ねばねばの成分は大きく分けると、水溶性食物繊維、ムチン、コンドロイチンの3種類です。それぞれに特徴があるので、気になる症状に合わせて上手に取り入れていきたいですね」(菊池さん・以下同)
そこで、これら3つのねばねば成分と効能について、菊池さんに解説してもらった。
■デトックス効果が高い水溶性食物繊維
まずは、水溶性の食物繊維。もっともわかりやすいのは、海藻のぬるぬる成分だ。
「海藻のねばねばといえばメカブなどが連想されますが、これはまさに水溶性食物繊維によるもの。ほかにも、昆布を細かく刻んだときに出てくるぬめりも、水溶性食物繊維によるものです。アルギン酸やフコイダンなど、その種類は細かく分類されますが、海藻類は水溶性食物繊維が豊富だと覚えておけばいいでしょう」
食物繊維といえば、腸内環境の改善に不可欠であることは、すでに知られているとおり。
「当然、お通じの改善にはもってこい。同じ食物繊維でも、ごぼうなどスジっぽい食材に含まれる不溶性食物繊維だと、便のかさが増えるために、腸の働きが弱い人の場合は、便が詰まり、かえって便秘が悪化してしまう可能性も。しかし、海藻のねばねばに含まれる水溶性食物繊維は、便の水分量を増やし軟らかくしてくれますので、排便そのものをスムーズにしてくれる働きがあります」
また、腸内の善玉菌の活動を活発にする作用もあるため、便秘解消とダブルで腸内環境を改善。
「そのほか、食塩のナトリウムと結びついて便といっしょに排せつされるため、血圧を下げる働きや、コレステロールの吸収を抑える働きも。さらに、ブドウ糖の吸収を穏やかにして、血糖値の急上昇を抑える働きもあります」
つまり、「余分なもの」を排出したり、働きを抑制するのが、水溶性食物繊維の特徴だといえる。
「お肉好きな方や、食べすぎ、塩分の取りすぎが気になる人におすすめしたい『ねばねば』ですね」
ねばねば食材以外では、こんにゃくや寒天などにも含まれる。
■スタミナ増強を助けるムチン
つづいて、やまいも、里芋、オクラ、なめこなどに含まれているムチン。ねばねば成分の代表格で、「ねばねば=スタミナ食」のイメージは、このムチンから想起されているようだ。
「ムチンがスタミナ食とみなされている最大の理由は、タンパク質分解酵素が豊富なこと。これによってタンパク質の吸収を助け、疲労回復効果があるのです。また、胃粘膜を保護する作用もあるため、消化を促進、胃潰瘍や胃炎の予防にもつながります。胃粘膜保護作用はアルコールの吸収を穏やかにしますし、肝機能や腎機能を強化する働きもあるので、肝臓が気になる人にもおすすめ。さらに、全身の細胞を活性化して、老化を防ぐ働きもありますので、元気の源になる『ねばねば』といえるでしょう」
■気になる美容に欠かせないコンドロイチン
そして、サプリメントのCMなどで耳にした人も多いであろうコンドロイチン。こちらはモロヘイヤのほか、オクラややまいも、なめこ、海藻など、これまで出てきた食材にも複合して含まれていることの多い、ねばねば成分だ。
「サプリメントに含まれているのは、このコンドロイチンを原料とした『コンドロイチン硫酸』です。コンドロイチン硫酸は関節痛や疲労回復効果があるといわれていますが、食品に含まれる量はわずかなので、サプリや医薬品として加工利用されることが多いのです」
もちろん、その原料であるコンドロイチンにも、うれしい効果がたくさんあるというが、その特徴はなんといっても、見た目の若々しさをもたらしてくれるところ。
「女性にとっていちばんうれしいのは、年齢とともに乾燥しがちな肌や髪に、うるおいとつやを与えてくれることでしょう。細胞と細胞のすき間が広がることで、肌や髪はぱさついてきますが、コンドロイチンはコラーゲンとともにこのすき間を埋める組織を構成。肌の保水性そのものを向上させる働きもあるので、みずみずしさの源といえるでしょう。そしてお肌や髪だけでなく、瞳の若々しさにも貢献してくれます。目もお肌同様、加齢によって濁ってくすみがちですが、コンドロイチンには、目の角膜や水晶体の透明感や弾力性を保つ作用も。若いころのように、澄んだきれいな瞳のもとになってくれるのです」
さらには女性のお悩み、骨粗しょう症の予防にも効果があるそう。
「女性は更年期を過ぎると骨密度が低下し、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まります。コンドロイチンはカルシウムの代謝にも関係しています。おおまかに言えば、骨をつくる細胞を活性化させて、骨を丈夫にしてくれるのです」
また、すでにすり減った軟骨などを再生する働きこそないものの、関節やじん帯などの弾力性を保つ働きがあるので、加齢のスピードもゆるやかに!
「コンドロイチンは、いきいきとした美しさをもたらしてくれる『ねばねば』といえますね」