能動的に泣くことでストレスを解消する「涙活」。泣きたい人が集まりひたすら涙を流す話題の「涙活」イベントに潜入取材してきた。開演10分前には満員の客席、男女半々くらいで、年齢も20〜60代とさまざま。他人に囲まれて、果たして泣けるものなのか?
開演時間、照明が落とされ、自称「涙ソムリエ」という役者の嵯峨崇司さん(31)による詩の朗読が始まった。犬の視点で飼い主をとらえた感動の詩。すでにウルッときて目頭を押さえる女性発見!泣く気満々だ。続いて「泣ける動画」8作品を上映。2作目あたりからハンカチやタオルで目頭を押さえる人がちらほら。手で涙をぬぐう男性もいた。約30分の動画上映のあと、いよいよサプライズゲストの登場!
韓国人歌手Kさんの情感あふれる歌声に、ほとんどの人が感極まって号泣……というクライマックスを迎え、感動のうちにイベントは終了。「仕事でストレスがたまっていたので、今日は来てよかった。知らない人ばかりの中で泣けないかと思ったのですが、かえって泣けるんですね」(樋口理恵さん・24歳・OL)。
この「涙活」イベント、仕掛け人は話題になった離婚式プランナー・寺井広樹さん(33)。「離婚式で別れるカップルが大泣きした後、皆さん実にスッキリした表情をなさるんです。そこで涙が気持ちの浄化につながることを実感しました。現代はストレス社会。能動的に泣く必要性があると思い『涙活』イベントを始めました」という。
確かに、泣いてスッキリ、は誰もが経験していることだろう。その理由を「セロトニン」研究の第一人者、脳生理学者で医師の有田秀穂先生が教えてくれた。涙には3種類あり、ドライアイなどを防ぐ基礎分泌の涙、ゴミが入ったときなどに流れる防護反射の涙、そして心を動かされたときに流す『情動の涙』に分けられると有田先生。
「ストレス解消に効果があるのは『情動の涙』。これは人間だけに備わる特別の機能です。感動の涙を流すことで緊張やストレスに関係する交感神経から、脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わります。たくさん涙を流すほどストレスが解消し、心の混乱や怒り、悲しみが改善されます。脳科学から見ても、涙活はストレス解消に大きな効果があります」