「長寿で注目されている長野県は、温泉を使った公衆浴場の数も全国No.1(環境省『平成25年版環境統計集』より)。県内には地元のお年寄りへの優遇制度を設けている温泉地もあるそうで、そうした環境も長寿を後押ししているかもしれませんね」

 

こう語るのは、順天堂大学医学部教授で、自律神経研究の第1人者・小林弘幸先生だ。「古来、日本人は“湯治”といって体を癒すために、温泉を利用してきました」というわけで、温泉による血流効果を紹介してくれた。

 

「温泉に溶けだしたガスやイオンは、皮膚から吸収され血管の内部にまで浸透することで、血流をよくします。代表的なのは、炭酸ガスや独特な香りでおなじみの硫黄泉の硫化水素。血管拡張作用があるので血流が増加し、血圧を下げて高血圧の改善にも効果があります」

 

含鉄泉はその名のとおり鉄分を多く含むので、造血作用が促進され、鉄欠乏症による貧血の改善が期待できるそうだ。

 

「そこに、お湯につかることそのものの効果も加わります。40度くらいのお湯に繰り返し入ると、血管内皮細胞の働きが活発になり、NO(一酸化窒素)がたくさん作られます。これは血管を拡張させ動脈硬化を予防します」

 

「静水圧」によるマッサージ効果も見逃せないという。これは、水圧による圧迫効果のこと。全身の血管に一定の圧力がかかることで、心臓を出入りする血流も増加するそう。

 

「栄養成分は全身に行き渡り、いっぽうで筋肉にたまった疲労物質や細胞の老廃物の排出が促進されます。お風呂から出た後でお手洗いが近くなったら、デトックス効果の表れだと思ってください」

 

ただし、いつもより長湯しがちなぶん注意点も。

 

「発汗により水分が減少し血流の粘度が増すと、血栓ができやすくなります。水温が上がるほど粘度も増してしまうので、熱いお風呂に長時間入るのは避けたほうがよいですね」

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