「年度の節目は環境の変化によって、心身ともにストレスを受ける人も少なくありません。ストレスは便秘の原因にもなります。そんな便秘が、うつ病の発症リスクになる可能性を秘めているようです。あくまでも仮説ではありますが、これは便秘外来で患者さまと接するなかで得た発見です」

 

こう語るのは順天堂大学教授の小林弘幸先生。便秘外来に来る患者は皆、「気にしすぎ」といえるほどに繊細で、便秘についても「毎日出さなければいけない」と、なかば強迫観念に苛まれているという。

 

「患者さまのようすを見ると、うつ病もしくはその予備軍と思えるような方が決して少なくないのです。ではなぜ、便秘がうつ症状を引き起こすのか?一つには、腸内環境悪化による血流の乱れがあります。悪玉菌が増加した腸内で作りだされる血液は、腐敗物質や毒素もいっぱい。全身の細胞は栄養不足で、かつ『毒素まみれ』の状態になります」

 

また、腸内環境が悪いと自律神経も乱れる。このとき血液中の赤血球も変形。酸素の運搬がうまくいかず、酸素不足に陥り、心身ともに活力は低下する。脳の酸素が不足すると、マイナス思考になるともいわれている。

 

「そしてもう一つ。便秘によって、幸福物質のセロトニンが作られなくなることです。うつ病の人は、そうでない人に比べて脳内のセロトニンの分泌量が少ないことが知られていますが、実はこのセロトニン、その多くが腸壁で作られています」

 

さらに、腸と脳は自律神経を介して密接につながっており、腸の状態が悪いと脳内でのセロトニンの分泌もストップする。

 

「便秘はいわば腸壁の慢性炎症。当然、腸でセロトニンを作る働きは鈍り、その影響で脳でも同じことが起こります。腸と脳の栄養不足に酸素不足、さらにセロトニン不足と三重苦!便秘とうつ症状には深い関わりがあるのです」

 

では、両方を解決するにはどうしたらいいのか?

 

「やはり生活の見直しが最重要課題ですが、1日スプーン2杯のオリーブオイルを、毎日の食事に取り入れるのもお勧めです。スペインのラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学による、1万2千人を対象にした調査では、オリーブオイルに含まれるオレイン酸や、魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸を多くとっている人は、うつになりにくい傾向が見られたそうです」

 

油分は潤滑油となって便を出しやすい状態にしてくれるうえ、オリーブオイルには小腸を刺激して、排便を促す作用もあるそうだ。便秘とうつの予防に、ラテンの恵みを頂いてみてはいかが?

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