「長生きをとるか、若々しい見た目をとるか——今後、われわれは究極の2択を迫られることになりそうです。今年2月、アメリカのアルベルト・アインシュタイン医学校が『アンチエイジングを促すホルモンが増えると、寿命が縮まる恐れがある』と発表しました」

 

そう語るのは、順天堂大学教授の小林弘幸先生。いくつになっても女性は美しくありたいもの。それが命取りになりかねないとは、悩ましい問題だ。では、アンチエイジングを促すホルモンとは何なのか?

 

「主に2種類あり、ひとつはインスリンの一種であるIGF-1。もうひとつはヒト成長ホルモンです。IGF-1は血管拡張作用があるので、全身の血流をスムーズに!結果、高血圧や糖尿病を予防し、心臓の健康にも関係します。また、学習効果を高め、うつ病やアルツハイマー病の発症も予防。骨密度増加作用や抗酸化作用など、ビタミンと似たような働きがあるのです」

 

また、髪の毛を美しく保つ作用もあるので、まさに全身に関わるアンチエイジングホルモンといえそうだ。

 

「いっぽう、ヒト成長ホルモンは、骨や筋肉を作るホルモン。代謝を上げ、肌の修復機能も担っています。パワフルな若々しさをつかさどるホルモンというイメージですね。」

 

どちらも加齢によって分泌量が減ることから、アンチエイジング業界では補充療法も登場し、セレブの間で注目されているという。

 

「ところが、今回、90代の被験者184人を11年間にわたり調査した結果では、IGF-1の量が血液1mmあたり1ng(ナノグラム・10億分の1グラム)減るごとに、1週間長生きできることが明らかになりました。50〜65歳の中高年を対象にした調査でも、IGF-1の値が高い人は、がんの進行が4倍も速かったとか!中高年以降ではある種のアンチエイジングホルモンの増加は免疫力を低下させ、寿命を縮める恐れがあるという結果になったのです」

 

とはいえ、ゼロになればいいというわけでもないらしい。これらのホルモンが極端に不足すれば、コレステロールが増え、糖尿病や心筋梗塞の発症リスクが上昇。記憶力の低下や、気持ちの落ち込みなどの症状が出る可能性もあるという。

 

「やはり、何事も『ほどほど』がいちばん。病気の場合などを除けば、過剰に補充するよりも自然な分泌を促すことが、美と長寿の『最適バランス』といえそうです」

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