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「『うちの家系は心臓が強いから大丈夫!』なんて根拠のないことを言う人に限って、心不全によって突然死するケースは多いのです」

 

そう話すのは、『心臓を使わない健康法』(マガジンハウス)などの著書をもち、血管の名医として知られる池谷敏郎先生。いま「隠れ心不全」が急増していることに警鐘を鳴らす。心不全とは、心臓が血液を送り出したり収縮したりする“ポンプ”の働きが低下して、全身の臓器に必要な血液量を送ることができなくなった状態のこと。

 

今月、佐賀大学医学部循環器内科が心不全に関する研究結果を発表した。30〜60代の20%が軽度の心不全か、その予備軍、つまり隠れ心不全だったという。2140人を対象に、心不全を判断する指標になるホルモン「NT-proBNP」の血中量を調べた結果、心不全が疑われるホルモン量が検出された人が多く見つかった。“高齢者に多い”と思われていた心不全が、若い世代にも一定のリスクがあることがわかった。隠れ心不全については、池谷先生も注目しているというのだ。

 

「近年、糖尿病やその予備軍である隠れ高血糖の患者さんが増えています。糖尿病と心不全は関連性が強く、血糖値の約2カ月間の平均値を表すヘモグロビンA1Cが1%増えると、心不全のリスクが15%増加するといわれています。太り気味、メタボの人は血糖値が高い場合が多いので、要注意です」

 

急死の原因になる、心筋梗塞や虚血性心疾患、心筋症など急性心不全がある一方で、症状が“じわじわ”と現れる慢性的な心不全も多い。その場合、日常生活では症状がはっきりと現れないので、「太ったから」「年のせい」と見過ごされがちなのだとか。

 

「日本人の死亡の原因は、がんに次ぐ2位が心疾患です。心臓というのは、少々無理をしてでも頑張り続ける臓器なので、意外と気がつかない。隠れ心不全を放置すると、突然死につながります。スポーツをしたり体を動かしつづけてきた元気な人でも、ある日ポックリということは、ありえないことではないのです」

 

早期発見するのが何より大事。そこで、池谷先生が教えてくれた“隠れ心不全”リストを今すぐチェック!

 

□夜間のトイレが増えた

□ベッドに入るとせきが出る

□全身にむくみがある

□みんなと歩いていると自分だけ遅れる

□坂を上がると苦しい

□息切れしやすい

□倦怠感がある

□手足の先が冷たい

□胸が苦しい、痛いときがある

□冷や汗が出る

 

これらのチェックリストに1つでも思い当たることがあれば黄色信号! 2つ以上なら“隠れ心不全”の可能性大! とくに池谷先生が初めに指摘したように、肥満やメタボと、心不全を起こしやすい人に当てはまるならなおのこと。ただし、貧血やぜんそく、腎機能が低下しているときや甲状腺系の病気、そしてたばこを吸う人なら、肺の炎症COPD(慢性閉塞性肺疾患)などが似た症状なので、混同されることも。気になるようなら迷わず検診を受けてみて。

 

「心不全は死亡の原因になるだけでなく、生活の質がぐっと下がってしまいます。階段を上がるのも買い物に行くのも大変。味が濃いものが食べられない、寝つきが悪くなるなど、さびしい生活になりがちなんです。そのためにも、隠れ心不全を放置しないことが大切です」

 

チェックリストで当てはまるものがなくても、心臓に負担をかけない体づくりが大事だと池谷先生。

 

「まず塩分と糖分の取りすぎに注意してください。心臓や血液など体のあちこちに負担をかけます。太りすぎにも要注意。栄養バランスを考えた適量の食事が基本です」

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