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秋深し。食欲のほうも絶好調! とくに疲れているときやイライラしているとき、無性に「アレ食べたい!」となることも多いのでは? 何を食べたくなるかは十人十色だが、甘いものや辛いもの、こってりしたものなど、体に悪そ〜なものに向かいがち。薄味ヘルシーな食品に手が伸びないのは、ナゼなの? そこで、オンナのカラダと「アレ食べたい!」の関係を、専門家に聞いてみた。

 

まずは、男女問わずストレスと食の関係性について。

 

「大きく分けて2つの関係性が考えられます」と語るのは医学博士の友常祐介先生。ストレスと味覚の関係に詳しく、現在は産業医として、メンタルヘルスをはじめとした働く人の健康管理に関わっている。

 

「まず1つ目は、交感神経と食べることの関係です。人間には、呼吸や血圧などをつかさどる自律神経があることは皆さんご存じかと思いますが、そのうち、ストレス下において活性化するのが交感神経。この交感神経が活性化すると、血圧や血糖値が上昇し、体は戦闘モードに入ります」(友常先生)

 

その「戦闘」とは、もとをたどれば狩猟。人類の祖先にとって戦いとは、獲物を狩ることだったのだ。

 

「つまり、交感神経が高まることは食料を得ることとつながっていたということです。その名残りで現在も、交感神経が活発になると食欲が増すのでは、と考えられています」(友常先生)

 

もう1つは、「報酬系」と呼ばれる脳の神経との関わりだ。

 

「人の脳には、欲求が満たされたときや、満たされることがわかったときに活性化する報酬系という神経系が存在しています。ここが刺激されると快感や意欲を導き出すドーパミンやβエンドルフィンといった脳内麻薬が放出され、私たちは幸福感を覚えます。そして、この報酬系を活性化するもののなかでもっとも“生物的で短絡的”なものの1つが、まさに『食欲』なのです」(友常先生)

 

つまり、人はストレスを感じると、手っ取り早い解決法として、ついつい食べすぎてしまう傾向があるということ。しかもある食べ物の中にはこの報酬系をダイレクトに刺激するものもあるという。これが冒頭の「アレ食べたい!」に関わっているらしいのだ。

 

興味深いのが、から揚げなどの「脂っこい食べ物」。味付けにかかわらず、脂自体が私たちを幸せにするというのだ。

 

「最近わかってきたことなのですが、脂肪の一種である長鎖脂肪酸が舌の付け根部分に接すると、味覚をつかさどる『舌咽神経』に触れて直接その刺激が脳に到達。これが報酬系の活性化と、ドーパミンやβエンドルフィンの放出に関係するというのです。脂肪というのは胃、十二指腸、小腸の順に消化されていくものですが、消化を待たず、舌から脳へ直接刺激が届くというのは、面白いですよね」(友常先生)

 

同様に甘いものも報酬系をダイレクトに刺激。また、血糖値の上昇も脳の快感につながるため、「やけ食い=スイーツ」の法則が定着したのだ。

 

さらに、女性は男性よりも味覚が変動しやすい傾向がある。まず女性のほうが、「味蕾」という、舌の上にある味覚をキャッチする器官の数が多い。さらに、味覚と女性ホルモンとの関りも深い。婦人科医で成城松村クリニックの松村圭子院長に解説してもらった。

 

「まず、プロゲステロンが関わっていると言えるでしょう。女性ホルモンと言えばエストロゲンをイメージする方も多いと思いますが、もう1つ、プロゲステロンというホルモンも分泌されていて、生理周期の後半に分泌量が増加。妊娠を維持するために水分や脂肪をため込む特徴があります。このプロゲステロンには味覚を鈍くさせる作用があることが、さまざまな調査でわかっています。さらにおなかの赤ちゃんを守るために食欲そのものを増進させる働きも知られています。そのため、生理前は食欲が旺盛になりやすく、かつ味覚が鈍くなっているぶん、濃い味を求める傾向にあると言えそうなのです」(松村院長)

 

また、生理前にも甘いものが欲しくなるという話もよく聞くが、これにもれっきとした理由があるという。

 

「まず、生理前はエストロゲンの減少と連動して、幸せ物質である脳内のセロトニンも減少します。これが生理前のイライラなどと深く関係しているのですが、セロトニンの原料になるトリプトファンという物質を脳に届けるためには糖質が必要です。だから、甘いものが欲しくなるのです。もちろん、シンプルに脳の報酬系を刺激するため、甘いものを欲するという場合も。この両方合わさっているケースがほとんどでしょうね」

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