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「かぜでつらいときに“とりあえず『葛根湯』を飲もう”と思っている人が多いと思います。しかし葛根湯は、寒気や発熱などの“初期症状”に有効な漢方薬です。あらゆる症状に効く万能薬でも、かぜの総合感冒薬でもありません」

 

そう指摘するのは、テレビの健康番組でもおなじみの池谷敏郎医学博士。約20年前から池谷先生は、不調を訴える患者に対して、漢方薬をよく処方しているという。東洋医学の代表ともいえる漢方薬と、西洋医学に基づく薬はそもそもどう違うのだろうか。

 

「西洋医学で用いられている薬は、化学的に合成されたものが主体で、その症状をピンポイントで抑える働きをします。いっぽう、漢方薬は、草や木など自然にあるものから取れる“生薬”でできています。その目的は、『気』『血』『津液』の3つのバランスを整えることなんです」(池谷先生・以下同)

 

「気」とは、人の生命活動を維持するエネルギーをさす。

 

「元気、やる気もその1つ。『病いは気から』というように、目に見えないけれど体を支える活動エネルギーのことです。『血』は血液だけを表すのではなく、体に栄養を与えるもののこと。東洋医学では、『精神活動も活発にさせるもの』とされています」

 

そして、リンパ液、胃液、涙など体内の水分を指すのが『津液(水)』だ。これによって、体は潤いを保つことができている。

 

「女性に起こりやすい『どこか具合が悪い……』という状態には、全身のバランスを整えるという立場から調合された漢方薬による治療が特に有効なのです」

 

寒さからかぜをひく人も多いこの季節。そういった患者に対しても、池谷先生は漢方薬を処方しているという。

 

「かぜの場合、その原因の多くはウイルス感染です。西洋医学の薬は症状を緩和することがあっても、かぜのウイルスをやっつけることはありません。かぜに特効薬はありませんからね。でも、漢方薬は熱を上げて発汗を導き、その人の免疫力を活性化させて、ウイルスと闘う体を応援するのです」

 

近年、漢方薬はドラッグストアでも販売され、種類も増えているため、どれを選べばいいかわからないという声も多い。しかし冒頭で池谷先生も警告していたように、「とりあえず葛根湯を……」という選び方はNG。「体質により処方する漢方薬は違う」と、先生はキッパリ語る。

 

「漢方薬の種類によっては、体質により効く人と効かない人がいるんです。東洋医学では、体質を『実証』と『虚証』とに分けます。みなさんは、疲れたらすぐに寝込みますか? 疲れていても頑張り続ける体力がありますか? 体力のある人は、実証。そうでない人は虚証タイプです。クリニックでは、その人の症状とともに、実証・虚証どちらなのかというタイプを考慮し処方しています」

 

まずは自分が「実証」「虚証」のどちらの体質なのかを知ろう。

 

【実証】

エネルギッシュ

声が大きい

疲れにくい

筋肉質

食欲旺盛

 

【虚証】

顔色が悪い

声が小さい

疲れやすい

やせ形

寒がりで低血圧

肌がカサカサ

 

「この体質を踏まえて、かぜの症状ごとに漢方薬を選んでいきます。同じ虚証の人でも、吐き気を訴える場合と、熱が長引いているときに服用する漢方薬はもちろん違います」

 

よく知られている「葛根湯」は、体力がある、つまり「実証タイプ」の人が、かぜをひきはじめたときこそ服用すべきもの。

 

「かぜをひきはじめたとき以外にも、慢性的な肩こりや筋肉痛に葛根湯が使われることもあります。この葛根湯には、解熱作用のある『葛根』、発汗を促す『桂皮』、しょうがからつくる『生姜』、炎症を抑える『甘草』や『芍薬』、そして『麻黄』『独活』『地黄』といった生薬が組み合わされています。『麻黄』は、交感神経を興奮させる作用があるので、胃腸の働きが悪くなり食欲減退、下痢といった副作用が出ることもあります。ですから、体力のないタイプの人には向かないんです」

 

胃腸が弱い人、ふだんから疲れやすい「虚証タイプ」の人がかぜのひきはじめに飲むのは『桂枝湯』のほうがいい、と池谷先生。

 

「それに、葛根湯は飲むタイミングを逃すと効果が弱まってしまいます。頭痛、寒気、筋肉痛などを感じたら、できるだけ早く飲みましょう。発汗が起こってからでは、効果半減です! ただし、葛根湯や桂枝湯を、かぜの予防のために服用するのはいいことだと思います」