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今年5月、米国内分泌学会雑誌『Journal of the Endocrine Society』に発表された、順天堂大学大学院医学研究科・スポートロジーセンター長の河盛隆造名誉教授らの研究グループによる《やせて筋肉が少ない女性に糖尿病などのリスクがある》という論文がいま話題だ。

 

「ヤセすぎの女性であっても、標準体形の人よりも糖尿病のリスクが高くなる、という研究結果が出ました。体形がスリムだと自分は健康であると考えている女性が多いと思いますが、誤った糖質制限食や運動不足は、重大な異常を引き起こしていることが多いので注意が必要です」(河盛先生・以下同)

 

肥満と糖尿病の関係はよく耳にするが、ヤセていてもリスクが高まるとは!

 

論文では20代の31人、50~65歳で閉経後の30人、いずれもヤセた女性を対象に、骨密度、骨量や全身の筋肉量、筋力、肝臓や骨格筋にたまった脂肪量、そしてインスリンによる筋肉や肝臓のブドウ糖処理能力を詳細に測定した。

 

ここでいう“ヤセ”の基準は、BMI(体格指数)16以上18.5未満。特に若い女性たちの身長は160センチを超え、体重は平均45キロほどというのだから、うらやましいスレンダー体形だ。

 

「検査の結果、50歳以上の閉経後のヤセた女性群では、筋力低下がみられ、筋肉量も少なく、いわゆる“サルコペニア”と診断される方が多かったのです。サルコペニアはお年寄りの転倒や骨折の原因となるもので、近年注目されているフレイル(虚弱)の特徴の一つです。彼女たちのうち、糖尿病予備群の割合はじつに37%に上っていて、これは同年代の標準体重の女性の17%に比べてかなり高い数値でした。さらに、若い女性にも同様の状態になっている方が少なからずいました。日焼けしたくないからと外を歩かない、日光を浴びないので骨量が少なく、骨粗しょう症になっている例さえあったのです。ヤセ願望の女性が炭水化物を取らない一方、彼女たちの体内では筋肉が運動のエネルギー源として欠かせないブドウ糖を作るため、結果自らの筋肉のタンパク質を分解することになり、筋量が低下します。これに脂肪分の多い食事が相乗的に悪影響を及ぼし、脂肪肝・脂肪筋になっていることが判明したのです」

 

体内に取り込んだ栄養素の量が消費量を上回っていると、本来はそれほど多くの脂質を蓄えることのない肝臓や骨格筋にも余剰に脂質がたまってしまう。この状態が脂肪肝・脂肪筋だ。これを解消するためには「食事の適正化」「体を動かす」「十分な睡眠」が肝心だと河盛先生は話す。

 

「まず食事。ごはんやパンなど炭水化物をきちんと取って、無意識のうちに多く取ってしまっている脂まみれの内容を見直しましょう。運動する筋肉へのエネルギー源となるタンパク質をきちんと取ることが大切です。和食が最良ですね。食べる順番にも留意し、野菜やきのこ、海藻類を食事の前半に取り、それから肉、魚などのタンパク質やごはんを十分においしく食べるようにしましょう」

 

もちろん、食べた分だけ体を動かす習慣をこまめに取り入れることを河盛先生は推奨する。

 

「自宅から300メートル程度しか離れていないコンビニに車で出かけるという人が多いのですが、買い物は“最高の運動”と捉え、車や自転車を使わず歩いてみましょう。駅でも階段を使うなど、意識的に体を動かすことを習慣づけてほしいです」

 

さらに、食後に体を動かす習慣をつけると、筋肉がブドウ糖を取り込むことで血糖値の急な上昇を抑えるだけでなく、筋肉も付くという好循環が生まれるという。

 

まだまだ暑い日が続いて寝苦しい季節だが、睡眠不足はすい臓から分泌されるインスリンの働きを低下させて血糖値を高めてしまうとともに、日中の間食を招くことにもつながってしまうので要注意。

 

誤ったダイエット法は、脂肪肝・脂肪筋だけでなく、骨粗しょう症や無月経など体調不良のリスクを高めてしまう。きちんと食べて動き、健康的な美を目指そう!

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