加齢とともにあなたに忍び寄る脊柱管狭窄症。50代以降から悩まされる人が急増している。脊柱管狭窄症は、脊柱管を通る神経が、腰椎の変形や、靱帯が厚くなることで圧迫され、お尻から脚にかけて痛みやしびれが起きる。
「もともと腰痛持ちでしたが、あのときは立っていると両足の先が冷たくなり、そのうちお尻から足先までしびれてきて……。歩いていても、しばらくすると脚のしびれが出て歩けなくなってしまいました。背中を丸めてひと休みして、また歩き出す、という具合。歌っているときは気が張っているからしびれがなかったものの、転んだらどうしようと不安は募るばかり。とうとう、ある日のステージで脚の感覚マヒからスッテーンと転んでしまって……」
こう話すのは歌手の水前寺清子さん(72)。彼女が脚に妙な違和感を覚えるようになったのは’13年のことだった。その後も症状は悪化し、何かにつかまらなければ、3メートルも歩けなくなるほどに。整形外科で検査をし、脊柱管狭窄症と診断された。「4〜5年後には歩けなくなり、車いす生活になる可能性もある」と医師から告げられたという。
’14年6月、水前寺さんは変形して神経を圧迫していた脊柱管の骨を削りとる手術を受けた。
「手術の怖さより、歩けなくなることへの恐怖がありました。歩けなくなったら、歌い手をやめなければいけません。なにしろ、ステージや生放送中に倒れたらみんなに迷惑をかけるし、ファンの方々に心配もかけたくありません。元気な姿でステージに立ちたい! という思いがあったから、手術を迷う余地はありませんでした」
手術は成功し、1週間で歩行器で動けるように。3週間の入院を経て退院した翌日にはステージに。元気な「チータ」が戻ってきた。体を動かすのが苦手という水前寺さん。ケアしていることは?
「気をつけているのはイスに座るときの姿勢。なるべく背筋を伸ばすようにしています。地方公演のため飛行機や新幹線での移動も多いのですが、そのときは枕やタオルを持っていき、背骨が曲がらないよう、背中に挟み込んでいます。あとは『もっと運動しなさい』と先生に言われているのですが、あまりできていません(笑)」
自身の経験を踏まえて「病気を患ったとしても悲観的にならないでほしい」と水前寺さんは話す。
「脊椎管狭窄症は、安静にしていると症状があまり出ません。しかも、しびれや痛みも背中を丸くした姿勢だと治まるのがやっかいで。どんどん外に出なくなり、姿勢も前かがみになってしまう負のスパイラルに陥りやすいそうです。いまの時代、年のせいと諦めてしまうのはもったいないこと。病気をすると心もとなくなりますが、怖がるよりも、『早く元気になろう』と考えたほうがいいと思っています。脊柱管狭窄症は『歩けなくなったら……』という悲嘆が募りますが、病気を恐れずに、治療を受けて早くよくなるに越したことはないと思いますよ」
“歩ける幸せ”を維持できるよう、予防を心がけ、仮に発症しても、きちんと向き合うことが大切だ。