親の“ボケはじめ”は突然やってくる。大事なのは慌てないこと。脳の活性化や心のケアなど、家族全員で支えてあげれば、その進行を遅らせることができるという。

 

「老いた親が認知症と診断されたからといって、子どもが絶望する必要はありません。認知症自体、直接的に死に結びつく病気ではないわけですし、対応次第では症状を緩和させたり、進行を遅らせることが十分に可能だからです」

 

こう語るのは『先生! 親がボケたみたいなんですけど……』(祥伝社)の著者、精神科医で国際医療福祉大学心理学科の和田秀樹教授。50代女性の親世代は70~80代、その多くが「ウチの親はいつ認知症と診断されるか」といった不安を抱えているはず。

 

だが、診断が出た途端に別人に変わるわけではない、と和田先生は忠告する。そして、認知症は老化に伴う自然現象であり、前向きな姿勢で受け入れてほしいとアドバイスする。

 

では「親の物忘れがひどい」と思ったときの対処法は? 和田先生は、“全体の90%は使われていない”とも言われる脳をもっと活用して、脳の老化を防ぐことが大事だと話す。

 

「脳内で最も早く老化が進行するのは前頭葉だといわれています。前頭葉は、記憶や感情、やる気などをつかさどる器官。この機能が落ちていくと、感情のコントロールが悪くなり、頑固になったり、怒りっぽくなったりします」(和田先生・以下同)

 

しかし、老化した前頭葉を刺激し続ければ、気持ちや意欲の老化を防ぐことができるという。

 

「親にはできるだけ“前頭葉を使う暮らし”をしてもらうことが大事です。前頭葉は老化すればするほど楽をしたがるので、子どもが親の前頭葉を刺激するシチュエーションを作ってあげることも、介護をするうえでの、大きなポイントになります」

 

そこで、老化した前頭葉を活性化させ、認知症の進行を遅らせる生活習慣を和田先生が教えてくれた。

 

■親の考えを肯定してあげる

 

「ボケがはじまった親との会話で頭ごなしに否定してはいけません。まずは親の考え方を『そうだね』と受け入れてあげましょう。否定ばかりされると、脳が思考停止をして、ますます老化が進みます。常に親の言い分を受容している態度を見せること。明らかに間違ったことを主張した場合でも、とりあえず『うん』と応えてから『でもね……』と続けましょう」

 

■今も「頼られている」と思わせる

 

「認知症の症状が出てくると『それは危ないからやめて』と心配する場面が増えると思いますが、その“戦力外通告”は、脳や体の機能を著しく低下させます。実際は困っていなくても、何かを親に相談して感謝の気持ちを伝えるなど、今も『家族に頼られている』と思わせることが大切です。『まだボケてられない』と親の意識をリセットしてあげましょう」

 

■「昔話」「自慢話」を聞いてあげる

 

「高齢になって、何度も同じ話を繰り返す人がいますが、そこで『またその自慢話?』と言葉を遮るのはやめてください。“昔話”は認知症の進行を遅らせる療法の一つで、的確な言葉選びと話の構成を組み立てる作業はよいトレーニングになります。“聞く9割、相づち1割”を基本にして、親が機嫌よく話せる体験談を、引き出してあげましょう」

 

■親の「得意なこと」を褒めてあげる

 

「どんなささいなことでもいいので“親が歩んできた過去”を褒めてあげることが、老化防止につながります。『お父さんってすごいね』『お母さんにはかなわないよ』と、親の得意なことを口に出して褒める機会を作りましょう。子どもの教育でも、仕事の現場でも『褒めたほうが成果が上がる』と言われていますが、高齢の親の場合も、それと同じ接し方でよいのです」

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