太っている人も、痩せ形の人にも潜んでいるかもしれないこの病気。放っておくと、さらにおそろしい血管の病気が進行することに――。
「3年ごとに行われる厚生労働省の調査で、’16年では『脂質異常症』患者数が206万人を超え、10年間でおよそ1.5倍にもなったことがわかりました。そしてそのうち、約150万人が女性。今年の調査では、さらに多くの患者数が発表されるのではないでしょうか」
そう話すのは、新著に『すべての病気は血管で防げる!』(青春出版社)がある、総合内科医の池谷敏郎先生。そもそも脂質異常症ってどういう病気なのだろうか?
「血液中の、悪玉コレステロール(LDL)と中性脂肪の脂肪値が高い状態をさします。また、善玉コレステロール(HDL)が少なすぎる人も、脂質異常症に当てはまります。この病気は動脈硬化を進行させて血管の老化を招き、体を酸化させ、狭心症や心筋梗塞などの致死的な疾患リスクを高めるのです」
脂質異常症に当てはまるコレステロールや中性脂肪の数値をまとめたものが次のとおり。健康診断の結果と併せて、自分が該当していないか確認してみよう。
■LDLコレステロール・140mg/dl以上→高LDLコレステロール血症
■HDLコレステロール・40mg/dl未満→低HDLコレステロール血症
■中性脂肪(トリグリセライド)・150mg/dl以上→高トリグリセライド血症
いずれかひとつでも該当すれば、脂質異常症に当てはまる。大事なのは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールのバランスなのだ。
「悪玉コレステロールは、肝臓から全身へコレステロールを運ぶ役割を担っていますが、増えすぎると、余分なコレステロールを置いてきぼりにしてきてしまいます。そしてそれを回収するのが善玉コレステロールです。また最近わかったのが、悪玉の中の超悪玉コレステロール(LAB)の存在です。これは小型で血管の壁に入りやすく、酸化もされやすいため、動脈硬化の危険因子として新たに重要視されています」
超悪玉コレステロールを増やさないことが脂質異常症、ひいては動脈硬化を防ぐ上で非常に大切だが、一般の血液検査には、その項目がないのだという。
「そこで、注目して欲しいのが中性脂肪です。中性脂肪は、運動量に対して糖や脂肪をとりすぎた際に、体内に増加します」
悪玉コレステロールや中性脂肪が増えやすいのはどんなタイプの人なのか? それは「代謝が低下しているタイプです」と池谷先生は指摘する。代謝が低下していると、食べすぎなくても太ることもあるという。
「特に女性は、40代以降、女性ホルモンが減少することから悪玉コレステロールが増加しやすくなる。さらに、代謝の力が著しく低下すれば、中性脂肪が増加し、超悪玉コレステロールも増えるのです。代謝が悪くならないように意識して、超悪玉や中性脂肪を体の中に増やさないようにしましょう」
まず、代謝が悪くなる原因として、池谷先生は(1)暴飲暴食、(2)運動不足、(3)悪い睡眠をあげる。
「運動不足や、食行動に異常がある人は、特によい睡眠を得られていない場合が多いのです」
睡眠不足になると、満腹中枢の感度が落ち、摂食中枢の空腹ホルモンのグレリンが増加し、過食してしまう傾向に。さらに、運動不足にもなる悪循環に陥る。そうして睡眠の質がどんどん悪くなると、代謝が低下し、結果的に脂質異常症を引き起こす可能性が高まるのだ。
「私も30代のころ、毎日が忙しく2~3時間の睡眠しかとっていませんでした。仕事ばかりしていたら36歳でメタボになり、当時の血管年齢はなんと45歳。さすがに反省して、40代に4~5時間の睡眠時間を確保することを生活の第一優先にしたら、メタボも解消されました。50代のいま、血管年齢はほぼ30代です」