適した病院は?負担は?認知症専門医にぶつける5の質問

読者世代にとって「認知症」「軽度認知障害(MCI)」に関することは、常に身近な関心事。しかし、これまで関心はあれど、切実に問題に向き合う必要がなかった人も多いはず。ここでは「ある日突然、親の異変に気づいてしまったら……」を、本誌・海野幸記者(仮名・48。広島県出身で現在は東京都在住)の体験をもとにレポート。「そのときどう対処すればいいのか?」について考えてみました――。

 

「あれ? 母が、何かおかしい」

 

初めて私がそう感じたのは、昨年12月。74歳の誕生日を記念して、久しぶりに母親と温泉旅行に出かけたときのことだった。記憶にあるしっかり者の母と、目の前の母の様子にギャップを感じること数度。ふだん離れて暮らしているからこそ、感じ取ることができた変化だったかもしれない。

 

74歳という年齢。「もしかして認知症?」と気になりだしたら不安が止まらなくなった。帰省のたびに「耳が遠くなったな。見た目が老けてきたな」と、加齢による変化は確認していたけれど、行動やふるまいに「おかしい」を実感することはあまりなかった。90歳で亡くなった祖母も、最後の数年は認知症だったが、母はまだ74歳。「まだまだ親は元気」と悠長に構えていたぶん、初めて頭をかすめた「認知症」の3文字に動揺するばかりだった。

 

「さて、どうしよう……」

 

そんな不安に直面した私がまずしたことは、認知症に関しての知識を得ることだった。祖母の介護は父と母がしていたし、そのとき私はすでに東京で暮らしていたので介護経験はなく、認知症の実態をほとんど知らない。

 

そこで、本やインターネットで情報を収集し、母親に感じた「何か変」を、一つひとつ照会していくことにした。

 

すると、母の症状は認知症とはなんだか違うようだった。記憶自体がすっぽり抜け落ちているわけでもなければ、散歩へ出かけて迷子になるようなこともない。

 

調べていくうちに、『軽度認知障害(MCI)』という言葉を見つけた。MCIとは、もの忘れのような記憶障害は出るものの、症状はまだ軽い「認知症の一歩手前」の状態を指すそうだ。母はこれに当てはまるのでは? そんな気がしてきた。

 

’12年時点で、日本の65歳以上の認知症推定人口は約462万人、MCIは約400万人といわれている。確かなのは、認知症であれ、MCIであれ、早めに専門医を受診したほうがいいということ。そしてMCIについては、適切な取り組みにより認知機能の維持が可能であるとのことだった。

 

母は本当にMCIなのか? そもそも、認知症とは何なのか? 次々に湧いてくる疑問を解消すべく、私は認知症予防・治療の第一人者である朝田隆先生のもとを訪れ、取材することにした。

 

「認知症とは、脳神経細胞の劣化によって起こる症状です。あとは脳血管障害、糖尿病を放置していたなど、複合的な要因も関係してきます。65歳以上、5つ年を取るごとに認知症になる危険性は2倍に。90歳を超えたら、6~7割の人は認知症になるといわれています」

 

加齢と認知症発症リスクは比例していて、年を取るほど発症率が高くなってしまう仕方ないことのよう。では、認知症やMCIを、患者本人やその家族が見分ける方法はあるのかと聞いてみた。

 

すると、「まず、自分たちで見分けようと思わないほうがいいです。すぐに病院へ行くことをおすすめします」とのお答え。しかし、参考までに、私が不安を感じた母の行動を朝田先生にチェックしてもらうことに。

 

【不安な行動・1】目がうつろで、気づけばボーッとしていることが多くなった

 

「うつ病の可能性もあるかもしれません。過去に甲状腺の手術をしているのであれば、甲状腺による認知機能の低下という可能性も考えられます」

 

【不安な行動・2】祖母の代が使っていたような古い方言ばかりで話すときがあった

 

「初めて聞くケースですが、日本語と韓国語を話す韓国の方が、認知症が進行するにつれて日本語を忘れていったということはありました。新たに獲得した言語を忘れていくのはMCIのサインといえるかもしれません」

 

【不安な行動・3】料理上手なのは変わらないが、使おうと思った具材をよく入れ忘れていた。

 

「単なるもの忘れなのかMCIなのか、グレーゾーンですね。注意力の欠如というのは確かに認知症やMCIの症状ではありますが、だからといって見極める決定的要因とはなりません」

 

【不安な行動・4】仕事を辞めた2年ほど前から、身なりや化粧に無頓着になっている

 

「“面倒くさい”は、認知症の兆候ではあります。身なりに無頓着になってしまうのは、MCI寄りといえるかもしれません」

 

【不安な行動・5】顔に蜂が止まっているのに、手で追い払おうとせず刺されてしまった

 

「加齢による反射神経の鈍りかもしれません。しかし、もの忘れなど記憶に関することばかりが認知症やMCIの症状ではなく、反射神経・運動神経の衰えにも影響していきますので、MCIの可能性は否定できないですね」

 

以上、朝田先生の回答をまとめると、母は「MCIの可能性は否定できない」ということ。改めて、病院で適切な診断を受けることの必要性を実感する結果となった。

 

「認知症は進行速度が遅くなることはあっても健常に戻ることはありません。しかし、MCIは改善が期待できます。MCIと診断された方の26%は健常に戻るともいわれていますので、早期に対策を始めることをおすすめします」

 

健常に戻る可能性があると知って喜んだのもつかの間、“MCIと診断された人の50%は4年で認知症に進行する”というデータもあると知り、身の引き締まる思いも。いずれにせよ、なるべく早く対策を始める必要があるのは間違いないようだ。

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