「いつも顔の同じ場所に吹き出物ができるという人は、皮脂の問題より、内臓の異変が疑われます。中医学では“顔は内臓の不調を映す鏡”ともいわれています」
そう話すのは、東京薬科大学薬学部中国医学研究室の猪越英明准教授。治ったと思ったらまたできる吹き出物。あの厄介な肌トラブルが、体の不調を語るというのだ。
「青春のシンボルともいわれる思春期ニキビは、成長してホルモンバランスが整えば自然に治まりますが、大人になってからできるニキビ、いわゆる吹き出物は、皮脂の分泌以外に原因があります。吹き出物が繰り返しできるという人は、食事や生活習慣など根本的なところを改善していく必要があります」(猪越先生・以下同)
中医学では、内臓を「肝」「心」「脾」「肺」「腎」と、5つのグループ「五臓」に分けている。このいずれかに不調をきたすと、顔の吹き出物としてSOSが発信される。吹き出物ができやすいパーツから、どの内臓の調子が悪いのかがわかるのだ。また、自覚症状のない“隠れ病い”の場合もあるので、思い当たる人は注意したいところ。
次のいずれかに当てはまる場合、生活習慣をどう見直していけばよいのか、それぞれのポイントを猪越先生に教えてもらった。
【鼻~口の周辺…「脾」】疑われる疾患=消化不良、下痢、便秘、胃もたれなど
「脾」は、消化器系すべての機能をつかさどる。鼻と口のまわりの吹き出物は胃腸が弱っているサインだという。
「食べすぎ、飲みすぎのほか、刺激の強い食材や冷たいものは控えましょう。甘いものは心身の疲れを癒して、胃腸の働きを助けますが、砂糖由来の甘さではなく、白菜やキャベツなど“かむと甘さが出てくる野菜”を食べるようにするといいですよ」
<対策>
白菜やキャベツ、山芋など「甘味」のあるものを食べる。いも類でも、さつまいもとじゃがいもは消化がよくないので控えよう。また、食事の際はよくかんで、早食いは厳禁!
【ほおの周辺…「肺」】疑われる疾患=かぜ、せきぜんそくなど
「肺」は呼吸器系の機能のほか、皮膚や鼻などの働きも含む。
「体温調節機能や、感染症を防ぐ免疫機能も含まれます。ちょうど今の季節、かぜが治りかけたころにせきが止まらなくなる人や、寒暖差でかぜをぶり返す人も増えてきます。ねぎ類やしょうが、シナモンなど辛い食材で体を温め、免疫力をアップさせましょう」
<対策>
ねぎ類やしょうが、シナモンなど「辛味」のある食材で体を温める。ただし、唐辛子には胃の粘膜を刺激するカプサイシンという成分が含まれるので取りすぎには注意を。同時に、ふだんから散歩やランニングをして呼吸器系を鍛える。
【顎の周辺…「腎」】疑われる疾患=更年期障害、膀胱炎など
「腎」は、体内の水分を調節する働きのほか、生殖器やホルモン、中枢神経など生命エネルギーの貯蔵庫と考えられている。「腎」の機能が低下すると、生理不順や更年期障害を招きやすくなる。
「女性は特に、女性ホルモンのバランスが乱れると、顎に吹き出物が出やすくなります。塩気を含む天然のものを取りましょう。黒ごま、黒豆、昆布やのりなど海藻類がおすすめです」
<対策>
黒ごま、黒豆、昆布やのりなど海藻類をはじめ「塩気」のある食材を食べ、軽いストレッチを日課にして更年期の症状を和らげる。
内臓に負担をかける習慣を見直せば、吹き出物も改善されるという。これからは体に負担がかかりがちな季節の変わり目。気になる吹き出物にはご注意を!