「栄養学では、食品の栄養素を十分に引き出すための調理法や食べ方が新たにわかってきています」
こう話すのは東京慈恵会医科大学附属第三病院栄養部の小沼宗大さん。小沼さんと同部の相木浩子さんは、食材の効果的な取り方をまとめた『長寿ホルモンを増やす!「長寿食材」の選び方と最高の食べ方』(宝島社)を監修した。
「食材にはそれぞれの特徴があり、切り方のほか、油を使って炒める、お湯でゆでるといった調理法、さらには食べる時間帯によっても体内に取り込める栄養素の量や働きが変わります」(小沼さん)
なかには多くの人が常識と考えているものとは異なる例も。そこで2択クイズを出題。“健康長寿をのばす食べ方”はどっち?
【Q1】骨を丈夫にする干ししいたけの使い方は?
〈さらに天日に干す〉or〈早めに水で戻す〉
正解はさらに天日に干す。骨の生成に大切なビタミンDが豊富に含まれている干ししいたけは、ひだの部分を上にして天日で干すとビタミンDの量が10倍にアップする。最近の市販の干ししいたけは機械乾燥が多いため、2時間ほど天日干しをしてから使おう。
【Q2】キウイの美肌効果を引き出せるのは?
〈朝〉or〈夜〉
正解は夜。レモンよりビタミンCの量が多く、食物繊維なども豊富なキウイフルーツ。
「寝る1時間前にキウイを2個食べたところ、睡眠障害が解消されたという報告があります。睡眠が改善されることで、美肌効果も期待できます」(小沼さん)
【Q3】疲労回復をアップする山芋の調理法は?
〈すりおろし〉or〈千切り〉
正解はすりおろし。山芋には疲労回復や免疫力アップの働きをするジオスゲニンという消化酵素が含まれている。ジオスゲニンの栄養素は、切るよりもすりおろしたほうが損なわれない。レモンやすだちなどビタミンCが豊富な食材と一緒に食べるとさらに効果が上がる。
【Q4】にんじんの免疫力を上げる切り方は?
〈細かく切る〉or〈大きめの乱切り〉
正解は大きめの乱切り。にんじんは、抗酸化作用の強いβカロテンが豊富。特に皮の部分にはβカロテンやポリフェノールが豊富に含まれている。細かく切ったりすりおろしてしまうと細胞が破壊されて栄養分が低下するため、皮をむかずに大きめに切って食べるのが理想。
【Q5】ブロッコリーのがん予防効果を引き出すには?
〈切って5分間放置〉or〈すぐにゆでる〉
正解は切って5分間放置。ブロッコリーには抗がん作用のある成分スルフォラファンが豊富。
「スルフォラファンはブロッコリーの断面から発生します。さらに、切ってから5分ほど放置することでより増えます」(相木さん)
また、熱に弱い成分なので、加熱時は75度以下で。
健康によいとされる食べ物も、調理の仕方ひとつで栄養素の量や働きは大きく変わってくる。
「たとえば、鉄分の多い食材の代表格のヒジキは、昔は鉄釜で蒸し煮していたので、鉄釜から鉄分を吸収していたのですが、今はステンレス製の釜が主流。そのためヒジキの鉄分はじつに約9分の1に減少しています」(相木さん)
健康寿命のためによいとされる食材。そのパワーを余すところなく摂取できるように心がけたい。