いまや日本人の国民病ともいえる「肩こり」。とりわけ女性の悩みは深く、厚生労働省の調査によれば、「腰痛」や「手足の関節が痛む」などを抑え、女性の体の悩みの第1位(平成28年「国民生活基礎調査の概況」より)となっている。
ちょうどいまの時期は、冬の寒さでこわばり「肩こりが悪化した」と感じる人も多いだろう。また「肩こりのせいで頭痛やめまいが……」という話を聞いたことがある人も少なくないのでは?
でも、ちょっと待って! そのつらい“肩こり”は、じつは“首こり”の可能性が高いのです!
「悪化することで頭痛やめまいを引き起こすというのは、肩こりではありません。それは“首”がこっているのです」
そう語るのは、40年以上首の研究と治療にあたってきた、松井病院、東京脳神経センター理事長の松井孝嘉先生。先生が名づけたという“首こり”について聞いた。
「確かに、かつて“首こり”は肩こりと同じ扱いをされてきましたが、そもそも肩こりは症候名(症状)のひとつで、正式な病名ではありません。そのため、実際には肩だけでなく、首すじや首の付け根から背中までのこりも含み、総称されていたのです。しかし、肩こりはいくら悪化しても頭痛やめまいにつながることはありません。これらの神経症状が現れるのは、あくまで“首”の筋肉の異常によるもの。そこで肩こりとは分けて“首こり”という名前をつけました」
首こりにもっとも関係の深い筋肉は、「頭板状筋」と「頭半棘筋」の2つ。頸椎から頭部にかけてを支えるように存在している。
「これらの首の筋肉に異常が起こると、頭部の神経や頸椎に影響を及ぼし、つらい症状を引き起こすのです。さらに頸椎のなかには自律神経も通っているため、首がこっているとあらゆる自律神経の不調の原因になりえるのです」
ちなみに、首から肩、背中にかけて広く存在する「僧帽筋」も、代表的な首の筋肉のひとつだ。
40年以上にわたり“首”の筋肉に着目し続けてきた松井先生によれば、こうした“首こり”の患者は年々増えているという。
「“首こり”の主な原因は2つ。ひとつは『長時間うつむいていること』で、もうひとつは『むち打ちの既往があること』です。なかでも近年増加しているのは前者です。パソコンやスマホの普及によって、この10年ほどで“首こり”の患者さんは増えたと感じています。とくに女性は、もともと男性より首の筋肉量が少なく、首がこりやすい傾向があります。家事や育児は下を向いて行うものが多いので、子育て経験者の多くは、首がこっていると考えられます」
デスクワークとは無縁な主婦も、“首こり”の可能性が高いのだ。また、この“首こり”が恐ろしいのは、「首がこっている」という事態に気がつかないまま、別の症状に悩まされることが少なくないという点だ。
「めまいや頭痛といった症状は、『肩こりやストレスが原因』と決めつけられがちですが、そう診断されてしまえば、たいていの人には心当たりがある。その結果、根本的な原因である“肩こり”の可能性を見落とし、適切な治療の機会を失ってしまうのです」
もしかしたらあなたの不調も、“首こり”が原因かも!?
「女性自身」2020年3月10日号 掲載