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ちょうどいまの時期は、冬の寒さでこわばり「肩こりが悪化した」と感じる人も多いだろう。また「肩こりのせいで頭痛やめまいが……」という話を聞いたことがある人も少なくないのでは?

 

でも、ちょっと待って! そのつらい“肩こり”は、じつは“首こり”の可能性が高いのです!

 

「悪化することで頭痛やめまいを引き起こすというのは、肩こりではありません。それは“首”がこっているのです」

 

そう語るのは、40年以上首の研究と治療にあたってきた、松井病院、東京脳神経センター理事長の松井孝嘉先生。40年以上にわたり“首”の筋肉に着目し続けてきた松井先生によれば、こうした“首こり”の患者は年々増えているという。

 

「“首こり”の主な原因は2つ。ひとつは『長時間うつむいていること』で、もうひとつは『むち打ちの既往があること』です。なかでも近年増加しているのは前者です。パソコンやスマホの普及によって、この10年ほどで“首こり”の患者さんは増えたと感じています。とくに女性は、もともと男性より首の筋肉量が少なく、首がこりやすい傾向があります。家事や育児は下を向いて行うものが多いので、子育て経験者の多くは、首がこっていると考えられます」

 

その改善の第一歩は、やはり日常の過ごし方だ。

 

「重度になれば治療が必要になりますが、それでも、治療時間以外の生活習慣が重要であることに変わりはありません」

 

ポイントは、いかに首の筋肉の負担を和らげるか。その具体的な方法を松井先生に聞いた。

 

「まずは首を冷やさないこと。筋肉は冷えると血液の巡りが悪くなるなど、てきめんに働きが落ちてしまいます。また、筋肉は血液が十分に行き渡らないと酸素不足になり、疲労物質を発生。これが筋肉の伸縮性を失わせ、こりの原因になるのです」

 

冷えを予防するには、物理的に温めることがいちばん! ホットタオルなら、首の冷えやこりが劇的に改善するという。

 

「水に濡らして軽く絞ったタオルをラップに包み電子レンジで1分程度温めるだけ。首だけでなく、全身がポカポカしますよ」

 

また、松井先生はふだんから、首の後ろに使い切りカイロを当てているという。

 

「女性は首元の開いた服装が多いため、それも首のこりを助長しているかもしれません。ハイネックや襟付きの服で、なるべく首のあたりを冷やさないようにしましょう。ただし、カイロは低温やけどに要注意。外出時のマフラーやネックウオーマーは必須です。また、夏もエアコンの冷気によって首が冷えます。ストールなどでしっかり首を守りましょう」

 

同様の理由から、首を温めるためには半身浴も避けたほうがベターだそう。

 

「もちろんシャワーで済ませるのは論外。40度前後のお湯に首までしっかり浸かりましょう。ただし、この入浴法はのぼせやすいので、高齢者や血圧の高い方、心臓の弱い方は十分に注意してください。さらに、入浴後はなるべく早く髪の毛を乾かすこと。濡れたままにしていると、せっかく温めた首に触れて冷えてしまいます。このとき、ドライヤーの温風で首の後ろを温めるとより効果的です。外出先から帰宅した際や体調がすぐれないとき、就寝前などにもこの『ドライヤー作戦』は使えます」

 

しっかり首を温めたら、首の筋肉を酷使しない生活スタイルもとりいれよう。

 

「パソコンを使うことが多いなら、ノートパソコンよりデスクトップのほうがおすすめ。ノートパソコンはどうしても画面が自分の目線よりも低くなるため、うつむきがちになってしまいます。買い換えられない場合は、せめて姿勢に気をつけて。視線が下がる分には問題ありませんので、首は傾けないよう、パソコンの下に台を置くなど工夫しましょう」

 

それでも気づかぬうちに首に負荷はかかるもの。だからこそ、夜はしっかり眠ることを心がけたい。

 

「眠りにつくことができなくても、首の筋肉を休めるために1日8時間は横になるよう習慣づけましょう。もちろん、良質な睡眠が得られれば自律神経のバランスも整いますので、一石二鳥です」

 

そして、もっともシンプルかつ重要なポイントは「15分に1回は上を向くこと」!

 

「首の筋肉が持続して緊張していられるのはせいぜい15分。それ以上同じ姿勢を続けていると筋肉の疲労が発生して、こりが生まれやすくなるのです。うつむいてデスクワークをしたり、家事をしているときは、15分ごとに30秒程度、首を休ませる時間をとりましょう。集中するとあっという間に時間はたってしまうので、タイマーなどを利用することをおすすめします」

 

そのとき、次の「ネックリラクゼーション」を行うと、疲れた首の筋肉をより効率的にゆるめることができる。

 

(1)イスに深く腰掛け、背中を背もたれにつけたまま、両手を頭の後ろに回して組む。両手で頭の重さを支え、首の後ろの筋肉を“ゆるめる”のがポイント。

(2)頭をゆっくり後ろに倒していき、首が痛くなる手前で止める。そのまま30秒キープ。

(3)両手で頭を持ち上げるようにして、頭を元の位置に戻す。

 

「ストレッチではなく、あくまで“ゆるめる”ことがポイント」

 

いま、町中でも多くの人はスマホを片手に、うつむいてばかり。松井先生はそれを「うつ」へ「向かう」=「うつむき社会」だと警鐘をならす。

 

「精神疾患としてのうつ病は別ですが、現代人を悩ませている“うつ症状”の多くは、“首こり”からくる自律神経の異常によるものだと考えています。ですから、まずはうつむかないことが大切。桜の花が咲くのも、間もなくです。古来、日本人が愛でてきた“春の便り”をゆっくりと見上げることで、この春は、“首こり”から卒業しましょう」

 

「女性自身」2020年3月10日号 掲載

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