「抗コリン作用」が熱中症に…医師語る「かぜ薬」の注意点

酷暑の季節がやってきた。今年はマスク生活が熱中症を招きやすいとされているが、身近な薬にもそのリスクが……。種類と対策を知っておこうーー。

 

「新型コロナ対策で、外出時には必ずマスクを着用する人がほとんどでしょう。マスクの内側は湿度が高く、喉の渇きなどに気づきにくいため、水分を取る回数が減りがち。このため、脱水症状をともなう熱中症を引き起こしやすいことが懸念されています。しかし、熱中症のリスクはさらに“意外”なところにもあります。猛暑下では、高血圧の方が服用する血圧を下げる薬(降圧剤)や頭痛を抑える鎮痛剤など、“いつも飲んでいる薬”にこそリスクが隠れているのです」

 

これから全国的に酷暑が続くことが予想されるなか、日本慢性期医療協会認定の総合診療医で、高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘さんは警鐘を鳴らす。

 

“降圧剤や鎮痛剤が熱中症を招く”とは、いったいどういうことなのだろうか……? 小川さんはまず、夏場における降圧剤の服用についてこう話す。

 

「高血圧疾患の患者さんの数は、特に50代を過ぎると増加していきます。日本人の高血圧の基準値は『上(=収縮期血圧)140/下(=拡張期血圧)90』(単位=mmHg)。血圧を下げる薬を服用している方も少なくありません。しかし、夏場は発汗することで血中の水分が減るため、体を巡る血液量は減少しやすい傾向にあります。つまり、汗をかきやすい夏は、おのずと血圧が下がっていることが多いのです。にもかかわらず、降圧剤を“いつも飲んでいる量”飲むことによって、血圧が下がりすぎてしまっている方が多くいます」

 

この「過度の血圧低下」によって、血液中の体液(汗の成分)が血管から外へ出にくくなってしまうのだという。

 

「本来人間は、発汗し、体の熱を放射することで、熱中症にならないように体温調整をしています。しかし、血圧が低い状態では汗が出にくい。結果、体に熱がこもったままですので、熱中症リスクが上昇するんです」

 

高齢の人などが熱中症で救急搬送されるケースもよく報道されるが、降圧剤などが関係していることも多いそう。

 

「降圧剤のなかには利尿作用のある薬(利尿薬)もあります。尿は汗とほとんど同じ成分ですので、利尿薬によってたくさん尿が出れば、血圧は下がっていく。そのほかの降圧剤と同じように、血圧が低い状態が作られることで、汗が出にくくなってしまうのです」

 

降圧剤や利尿薬は、おもに高血圧の人が飲む薬。だが、家庭内にあるような身近な薬も「熱中症リスクを高める恐れがある」と小川さんは言う。

 

「かぜ薬(総合感冒薬)や胃腸薬、そして酔い止めなどには、『抗コリン作用』という副作用を持つ薬があります。抗コリン作用とは、神経伝達物質のひとつである『アセチルコリン』が、『アセチルコリン受容体』にくっつくのを邪魔する作用のことを言います。これによって発汗が抑制されてしまうという副作用があるのです」

 

この抗コリン作用は、花粉症の人などに処方される抗ヒスタミン薬、鎮痛剤、抗不整脈薬や向精神薬の一部にも認められているという。

 

発汗が抑制されるということは、前出の降圧剤や利尿薬と同様に、体に熱がこもってしまうということ。猛暑下で使用する際は、このような副作用があることを頭に入れておこう。

 

薬の副作用と熱中症の意外な関係について教えてくれた小川さんに、“正しい薬の飲み方”について聞いた。

 

「高齢になるにつれ、多くの種類の薬を服用する方も増えるでしょう。しかし、自己判断で服用回数や量を増やしたりするべきではありません。どんな薬でも有用な効果のうちに副作用がありますから、かかりつけ医の指示に従って、適切に服用しましょう」

 

どうしても、かぜ薬や胃腸薬、鎮痛剤などの『抗コリン作用』の副作用を持つ薬を服用しなければならないときもあるはず。その際にできる熱中症対策はあるのだろうか。

 

「これらの薬を飲む場合は、『汗が出にくい』という状態を緩和する必要があります。そのために、こまめな水分補給をするようにしましょう。ただの水ではなく、スポーツドリンクなどの食塩入りの飲み物を取るべき。または市販の経口補水液でもいいと思います。体調不良のときに自己判断をせず、かかりつけ医を受診して重症化を防いでください」

 

「適度な水分補給」と「かかりつけ医の受診」の二段構えで“薬が招く熱中症”を防ごう。

 

「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載

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