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「なんだかイライラしがちだったり、ネガティブな感情が先行していたり。そういった傾向に思い当たる人は、脳が老化している危険性があると言えます。今年は特に、何かとコロナ禍の影響によるものと考えてしまいがちでもあり、注意が必要です」

 

こう話すのは、これまで1万人以上の脳のMRI画像を診断してきた脳内科医の加藤俊徳先生だ。“脳の老化のサイン”に当てはまるものがないか、次のチェックリストの項目を確認してみよう。

 

【脳の老化を招く習慣チェックリスト】

□ イライラすることが多い
□ 一方的に怒ることが多い
□ よく人の悪口を言う
□ 自己否定しがちだ
□ 「いまどきの若い子は……」が口ぐせ
□ 家と会社を往復するだけのような生活だ
□ 夫や義両親など、人の言いなりになっている
□ 昨日の食事のメニューを思い出せないことがある

 

「リストにあるような『感情的になる』『物事をネガティブに捉える』『自分とは違う価値観を受け入れられない』『自分で考える機会が少ない』という人の脳は老化しやすいのです。こうした習慣を改めると同時に、脳を若返らせるための方法はいくつもあります」(加藤先生・以下同)

 

その中から加藤先生が手軽にできるエクササイズとしておすすめするのが、「8の字スクワット」だ。

 

【8の字スクワット】

(1)丸めたフェースタオルを左手に持ち、肩幅よりやや広めに足を開いて立つ。
(2)腰を落として、左のももの下を後ろから通したタオルを、前から右手に持ちかえる。
(3)タオルを持った右手を前方から頭の上に伸ばす。同時に脚を伸ばし、目は右手の動きを追う。
(4)右腕を後ろに回しながら、徐々に腰を落とし、右のももの下でタオルを左手に持ちかえる。
(5)(3)と同様に、タオルを目で追いながら、左手を頭の上に伸ばす。同時に脚も伸ばす。

 

加藤先生オリジナルのこのエクササイズで、用意するのはフェースタオル1枚だけ。スクワットをする要領で腰を落としながら、同時に手に持ったタオルをももの下→もう片方の手→手と脚を伸ばす……と8の字を描くように受け渡すことを繰り返す。(1)〜(5)を1セットとし、10セット行うだけで、みるみる脳が若返るという。所要時間はわずか1分だ。

 

「人は年を取ると、まず脳の運動系の分野が弱まります。中高年の運動不足はアルツハイマー型認知症になる確率を約4倍高めるとの研究もあるほど。この運動系を刺激することで、脳全体の機能が改善されるのです」

 

スクワットをしながら同時に背泳ぎに似た腕の動きでタオルを受け渡す動作は、実際にやってみると、はじめのうちはももの下でタオルを持ちかえる動作でまごつく人も多いだろう。

 

そこが8の字スクワットのいちばんのポイント。脳は“同じことの繰り返し”によって老化します。しっかり考えなければできない動作であることが大切なのです。それに加え、自分では見えにくい方向からタオルを反対の手に持ちかえる動作で、視覚系や空間認知力を高め、脳の側頭葉の内側にある海馬の働きも高めることができます。人の記憶力を司る海馬の機能が衰えると、数秒前の出来事といまのことが連続しなくなってしまいます。これが常態化するのが認知症の症状です。もともと海馬は怠けやすいので、積極的に使うことが大切です」

 

8の字スクワットは海馬の働きを活性化させる効果がてきめんで、もの忘れ防止につながるのだ。

 

「また両手両足を同時に使い、体の真ん中に重心を定めながら上下左右に動かすという作業は、日常的にはなかなかないもの。こうした動作を行うことで、脳の反応スピードがよくなり、認知症の予防につながることはこれまでの治療でわかっています」

 

実際に、加藤先生の指導で8の字スクワットを実践した人からは《ちょっとしたもの忘れが改善された》という声と同時に、《慢性的な腰の痛みが軽減した》といった声も寄せられているとか。脳と足腰を若々しく保つ、健康寿命の近道とあれば、ぜひ取り入れたいところだ。

 

ときどきタオルの大きさや素材、色などを変えると、視覚イメージや握ったときの感覚が変わり、脳に新たな刺激を与えられるという。それが飽きずに続けるコツでもあるそうだ。

 

「いまの日本人は世界的に見ても座っている時間が長い。ずっと座ったままの生活をしていると、脳の中でも自分の体のバランスが上手に取れなくなってしまいます。最初は、ゆっくり大きな動作で始め、自分の体の硬さに合わせ、決して無理をしないでください。体が慣れてきたら、倒れない範囲で、左右にタオルを持った腕をできるだけ大きく振るように徐々に心がけましょう。こうすることで、脳の中心部にあるバランスを保つ機能も活性化させることができます」

 

1日1分の簡単エクササイズで、認知症を防ぐ足固めをしていこう。

 

「女性自身」2020年10月27日号 掲載

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