「病院に行ってコロナになるのが怖いから」。そんな理由でがん検診を控える人が増えている。だが、医師はこんな警鐘をーー。
がん検診を受診する人が激減している。「日本対がん協会」によると、地方自治体のがん検診での受診件数は、国内でコロナ感染が拡大した今年3月に前年比の64%まで落ち込むと、4月には前年比16%、5月には8%と激減した。
常磐病院(福島県)の乳腺外科医の尾崎章彦さんが語る。
「東日本大震災のとき、独自に調査しましたが、福島県では症状を自覚していながら病院に1年以上行かなかったケースが、震災前は4.1%でしたが、震災後には18.6%と、約4.5倍も増えました。こうした“受診控え”は、今回のコロナ禍においても実感します。なかには、非常に進行の早いがんもあるので、注意が必要です」
そこで専門医等に取材し、上半身で疑われるがんの代表的な自覚症状を作成した(※医師への取材をもとに本誌が作成。がんによって、ここにない症状が出ることもあります。症状が出なくてもがんになることもあるので、必ず定期的な検診を受けましょう。また、ここに出る症状が別の病気によるものであることもありますので、必ず医師の判断を仰いでください)。
【頭】
□ これまでなかった急な頭痛がある=脳腫瘍
□ これまでとは位置や痛み方の違う頭痛がある=脳腫瘍
□ 言葉が理解しにくい=脳腫瘍
□ 急に始まったふらつき、息切れ、顔が白くなるなどの貧血症状=大腸がん、胃がん、子宮体がん
【目】
□ 片目だけ見えづらい=脳腫瘍
□ 部分的な視野の欠損がある=脳腫瘍
【口】
□ 言葉が出にくい=脳腫瘍
□ 舌に、なかなか治らないしこりやただれがある=舌がん
【のど】
□ たんに血が混じる=肺がん
□ 息切れがする=肺がん
□ 2週間以上続くせき症状=肺がん
□ 声のかすれ=食道がん
□ 食べ物が食道でつかえる、しみる=食道がん
【胸】
□ 胸のつかえや痛み、違和感が生じる=食道がん
□ 動悸、胸痛、息苦しさが続く=肺がん
【手足】
□ 片方の手(足)に力が入りにくい=脳腫瘍
□ ふらふらとして、真っすぐ歩けない=脳腫瘍
【乳房】
□ 胸にしこりがある=乳がん
□ 脇の下にしこりがある=乳がん
□ 乳首の色が変わる、ただれる=乳がん
□ 左右の胸の形が対称的でなくなる=乳がん
□ 胸の皮膚があつぼったくなったり、赤くなる=乳がん
□ 乳頭から透明、赤、もしくは黒っぽい分泌液が出る=乳がん
もちろん症状があるからといって、即がんというわけではないが……。
「少しでも不安な症状があれば、医療機関で受診すべき。たとえば乳がんの場合は、胸のしこりをセルフチェックできます。ただ、症状に気づいたときには進行しているケースも少なくない。触診では見つからない病変もあるので、40歳以上の人は2年に1度、マンモグラフィー検査を受けることをおすすめします」(尾崎さん)
前出の日本対がん協会の調査で、受診率が低かった肺がん(5月の前年同月比5.8%)に関しても、日本医科大学附属病院呼吸器内科・久保田馨さんからアドバイスをもらった。
「肺がん患者は若年層ではまれですが、50代から増加が著しくなり、患者数のピークは70代前半です。せきや息切れが続く場合は、必ず受診してください。検査は胸部単純X線検査が一般的ですが、発見が難しい場合もあり、必要に応じて胸部CT検査を行います。検診においても、CT検査はX線と比べて、見逃しのリスクが低く、肺がんによる死亡率も20%低くなると報告されています。禁煙や受動喫煙防止とともに、定期検診や早めの受診が有効です」
ここで紹介した症状がある人は迷わず病院へ行こう。そして、いちばんは症状の出ていないがんも発見できるがん検診を受けること。コロナ禍であっても、がん検診は不要不急の外出ではないのだ。
「女性自身」2020年11月17日号 掲載