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厚生労働省研究班の調査によると、現在の腰痛の推計患者数は2,800万人。いまやれっきとした日本の国民病だ。

 

「寒くなると、腰痛を訴える患者さんが増えます。さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって、その数が増加しているのです」

 

そう語るのは、鍼灸師の内田輝和さん。一般の患者はもとよりオリンピック選手やプロスポーツ選手などアスリートの体も見てきた内田さんによれば、未曽有のコロナ禍で過ごしたこの冬は、これまでになく腰痛を引き起こしやすいシーズンだったという。

 

「そのカギは“お尻の筋肉”にあります。腰痛は、脊柱起立筋という長い筋肉が冷えたり衰えたりすると、起こりやすくなります。脊柱起立筋とは、頭蓋骨から骨盤まで背骨に沿って長くついている筋肉ですが、そのうちの、腰回りの筋肉の部分を左右から支えているのがお尻の筋肉です。土台が弱くなると家が傾くのと同じで、お尻の筋肉が衰えると腰の筋肉を支えることができず、バランスを崩してしまいます。これが腰痛を引き起こすのです」(内田さん・以下同)

 

同時にお尻の筋肉は、座骨神経を包みこんでもいる。

 

「座骨神経は、“座骨”という、ちょうど椅子に座ったときに座面にあたる骨から、お尻の深い場所にある梨状筋を通って、足に向かっている末梢神経のことです。お尻の左右の筋肉が鍛えられていないと空気の抜けた自転車のタイヤのようにガタガタして、その衝撃が座骨神経から腰に伝わることで、これも腰痛の原因に。つまりお尻の筋肉は、脊柱起立筋と座骨神経の両方をサポートする、腰痛予防の要と言えるのです」

 

そんなお尻の筋肉を劣化させる原因が「冷えと運動不足にある」と内田先生は話す。

 

「お尻が冷えると筋肉の中の血液の流れ(筋血流)が悪くなり、もともと筋肉が弱い人はダメージを受けやすくなります。さらに、お尻の筋血流が悪化すると神経が傷つきやすくなるため、座骨神経も傷つきやすくなるのです」

 

2つめの「運動不足」は、積極的な運動に限らず、片寄った姿勢などでお尻の筋肉が左右均等に使えていない状態が慢性化していることも指す。

 

「たとえば同じ側の足だけ組んで座ってしまう癖がある人は、組んでいるほうのお尻や足の筋肉が衰えている可能性があります。そのため疲れやすく、また組んでしまう、という悪循環の繰り返しになっているのです」

 

運動不足や片寄った姿勢は、筋肉を衰えさせるだけでなく、筋血流の悪化も招くので注意が必要だ。

 

「女性自身」2021年3月9日号 掲載

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